「延ばす」(のばす)〜上演時間〜
上演時間をコントロールする演劇用語として、
「押す」「巻く」「盗む」などがありますが、
「延ばす」とは、文字通り上演時間を延ばすこと、長くすることを表します。
ではこの「延ばす」とは、どのような場合に起こるのでしょうか。
プロデュース的な要因としては、
例えば公演時間が短すぎるという判断が下された場合に起こります。
お客様がチケットを買って、時間を割いて劇場に来てくださるのに、
あまりにも上演時間が短いと、がっかりしてしまうのでは・・・
というプロデューサーなどの考えにより、
脚本を書き足そうとか、ミュージカルなら何曲か増やそう、といった注文が出るケースです。
演出的な要因としては、
例えば「音響に合わせて欲しい」「着替えが間に合わない」などといった場合に起こります。
演出や脚本の意図に対し、物理的に時間が足りないという、やむを得ない理由が多いのですが、
そのシーンが間延びしないように解決策を図るのは、なかなか難しいものです。
このように、公演の初日を迎える前に、
演出やプロデュースの都合上、公演時間を延ばすことは多々ありますが、
ごく稀ながら、主催者側の理由で急遽予定よりも上演時間を延ばす場合もあります。
例えば、それは出演者が遅刻している場合などに起こります。
俳優は自己管理が仕事といっても良い程の職業ですから、
プロの俳優がありきたりな遅刻をすることはほとんどありませんが、
事故や天災、交通・移動手段の問題などで遅刻してしまうことも起こりえます。
プロスポーツでは、二番手が登場!といったところかもしれませんが、
舞台では二番手(代役)を用意していることはあまりありません。
もちろん、開演時間を押して対応することが多いのですが、
延々とお客様を待たせ続けるわけにもいきませんし、
そんな場合、到着までの何分かを「延ばす」ということがあります。
しかし突然のことですので、アドリブで何分も保たせるのは容易ではありません。
幕を開けてしまった場合も、挨拶や一芸を加えて延ばすことが多いように思います。
観劇の際、ロビーにたいてい貼ってある「上演時間」をご覧になって、
その差を考察してみるのもおもしろいのではないでしょうか。
5分以上の違いがあった場合、きっと裏では何かが起こっていると思いますよ。