「面」(つら)
「奥」(おく)
舞台の左右を上・下(かみ・しも)と呼ぶのに対して、
舞台の前方を舞台面(ぶたいっつら)、後方を舞台奥(ぶたいおく)と呼びます。
通称「面・奥」となるわけです。
この「上下・面奥」は感覚的に体に入るのに時間がかかり、
ベテラン俳優でさえ、時たま間違えてしまうことがあります。
なぜかというと、他に「前後左右」という普段使っている言葉も入り交じり、
ちょっと複雑に使われるからです。
演出家に「一歩上へ」と言われたら、体の向きに関わらず上手へ一歩。
「一歩奥へ」と言われたら、同じく体の向きに関わらず奥へ一歩。
しかし「一歩前へ」と言われた場合は
その時の体の向きに対して、一歩前へ動かなければなりません。
お解りでしょうか?
前後左右は体の向きに対して使われ、
上下面奥は舞台の向きに対して使われるのです。
演出家に、「上手に三尺行って前に一歩、ちょい右へ」
「舞台奥に向かって45度下手に向いてキューが出たら後ろに三歩下がって」
などと言われても、考えてからではなく、すぐに体が動くよう、
俳優は鍛錬しておくことが必要なのです。