頭取

「頭取」(とうどり)

銀行などのトップ(社長)のことを「頭取」と言いますよね。
演劇界では、劇場の楽屋を取り締まる人のことを「頭取」と呼びます。

「頭取」という言葉は歌舞伎の世界で用いられていたものです。
意味としては「座頭」とほぼ同じで、一座の頭取が座頭という使われ方もしますが、
一座のトップであり、すべてを決定し、また責任をも負う座頭に対し、
頭取は楽屋の取り締まりをする役割で、主に古参の役者が務めていました。
別名「楽屋頭取」とも言い、現在で言うと庶務のような役割でしょうか。
頭取は、楽屋に頭取座という詰め所(居室)があり、
上演が終わった後に切り口上を述べるのも頭取の役目でした。

この「頭取」は、雅楽の世界から生まれた言葉です。
雅楽の合奏のとき、管楽器の首席演奏者のことを「頭取」と呼ぶのですが、
(管楽器以外でも主席演奏者を頭取と言うこともあります)
やがて、能や歌舞伎で「翁」「三番叟(さんばそう)」を上演するとき、
小鼓方三人のうち、中央に座る主奏者のことを「頭取」と呼ぶようになりました。
つまり、演奏者の中で音頭を取る人、ということですね。

それが時を経て、集団の中で皆をまとめる人、といった感じに意味が転じ、
歌舞伎界では楽屋を取り締まる人を指して用いられるようになりました。
また、同じ意味で相撲界でも「頭取」は用いられています。

近現代では、銀行など金融業の最高役職を指しても用いられる「頭取」という言葉は、
芸能と経済の業界で共通して用いられるという、かなり珍しい業界用語であると言えそうです。

「頭取」奥付

  • Posted : 2009年3月 5日 02:13
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