「床山」(とこやま)
お芝居の世界で、鬘(かつら)を結ったり、手入れをしたりする人のことを「床山」と言います。
相撲界では、力士の髷(まげ)を結う人を同じように呼びますよね。
どちらの「床山」も同じ職業を指す言葉で、語源は江戸時代の歌舞伎界にあります。
歌舞伎が発祥した当初は、歌舞伎役者の髪を床山が直接結っていました。
当初、床山は相撲の力士の髪も結っていたそうですが、
それがやがて相撲界でも専門の職業となり、現在に至っているようです。
一方、歌舞伎ではかつらを使用するのが一般的になっていき、
床山もかつらの髪を結う役割へと変わっていきました。
それがやがて演劇界全体に広まっていったのですね。
なお、正確にはかつらの髪を結い、手入れ、保管をする人を「床山」と言い、
かつらの土台となる「台金」を作る人のことは「鬘屋(かつやら)」と言います。
また、歌舞伎の床山は立役と女方で担当が分かれていることがほとんどです。
ところで、一般にも理容店のことを「床屋」と言いますが、
なぜ「床」屋と呼ばれるようになったのでしょうか?
この語源もやはり江戸時代で、
当時、理容店は「髪結い」と呼ばれていたのですが、
その店構えは現在でいう屋台のような移動式の簡易店だったそうです。
(ただし車はついておらず、折り畳み式だったとか。)
この簡易的な店舗を「床店(とこみせ)」と言うため、
髪結いの店を「髪結い床」と呼ぶようになり、
やがて現在の「床屋」という名称になったのです。
ちなみに、現在の床屋の看板ですが、
赤・青・白の組み合わせのねじれたポール状の物が主流ですよね。
これは、昔のヨーロッパの床屋さんが外科医を兼ねていたことから、
それぞれ、動脈(赤)・静脈(青)・包帯(白)を象徴する色として生まれた看板です。
現在、「床屋」という言葉は差別用語と判断されることもあり、
放送禁止用語の1つに数えられていることが多いようです。
テレビやラジオなどのマスコミは「理髪店」「理容院」などと呼んでいるようですが、
この語源を見てみても、なぜ差別用語になるのか不思議ですよね。