「殺陣」(たて)
「殺陣」は、「立ち回り」同様、乱闘・斬り合いなどを表す言葉です。
言葉としてはほとんど同じ意味で用いられていますが、
芝居の世界では少しニュアンスが異なって使われます。
「立ち回り」は、元々芝居の動きすべてを表す言葉。
一方「殺陣」は、戦争用語の「陣立て」「戦立て」などを総じて略した
「たて」から生まれたと言われています。
元々は大人数での戦いを表す感じの言葉ということですね。
そして大正時代、「新国劇」という主に大衆劇・剣術劇を演ずる劇団があり、
この劇団を創設した沢田正二郎が、
「たて」という言葉に「殺陣」という漢字を当てたのが
現在も使われる「殺陣」になったと言われています。
当初は「たて」ではなく「さつじん」と読んでいたと言われており、
「たて」という言葉が普及した現在でも、「さつじん」と読んでも誤りではありません。
それまで、歌舞伎などで美しく魅せる形で演じられていた剣術シーンが
この新国劇によってリアルで激しいものとなり、
現在に至る殺陣シーンの基本や、大衆演劇の始祖となりました。
現在でも、「殺陣」と言うと日本刀などの刀剣を使った戦の印象が強く、
「立ち回り」と言うと争いや大きな動きを表す印象が強いのも、
これら言葉の語源に由来しているのかもしれませんね。
しかし、辞書を引くと二つの言葉に差違はなく
共に「乱闘・捕り物・斬り合いなどの演技」と記されています。
今後、どのように使われていくかによって、
言葉の持つ意味が変わってくるのかもしれませんね。