「紗幕(斜幕)」(しゃまく)
「紗」とは、女性が夏に羽織ったりする薄衣、
目が粗く織られ、透けて見えるような薄くて軽い織物のことです。
着物など和服に用いられていることが多いようですね。
同様に、絡み織りした「紗」で出来た幕のことを「紗幕」と言います。
「斜幕」と表記されていることもありますが、
意味を考えると「紗幕」と書く方が正しい感じがしますね。
「紗幕」は、素材が糸とは限りませんが、見た目は衣服と似たような感じで
光が透過する薄手の幕のことを言います。
薄くて軽いため、劇場の天井から吊さなくても使えますし、
また照明を利用して様々な演出上の効果を生み出すことが可能です。
例えば、紗幕を降ろしても舞台中の照明が付いていると中が透けて見えるので、
この照明を調整して、中をうっすらと見せたりすることができます。
また、紗幕外(客席側)から照明をあてたまま舞台中を暗くすると、
紗幕の後ろは見えなくなるので、紗幕前で芝居をしながら裏で転換をしたり。
さらに、劇場全体を暗くして、スライド映写に利用するなんて方法も・・・
このように、様々な演出効果を生み出せる幕なので、
演劇だけではなく、舞台芸術では頻繁に用いられます。
紗幕は、劇場に備わっているものもありますが、
上演される作品に合わせ、絵や模様、サイズや素材などを決めて注文製作、
公演を行う側が持ち込んで使うことも多く、
「幕」とは言え、緞帳など他の多くの幕とは違うタイプの幕と言えそうです。
ただし、生糸の紗で作られたものは、
既製品で販売されている物でもけっこうな価格となっていることが多いので、
公演を行う際は予算の面でご注意くださいね。