「尺」(しゃく)
「寸」(すん)
「尺・寸」などは「尺貫法」と呼ばれる長さの単位です。
演劇界においては、現在でもこの「尺貫法」が主流ですが、
今ではピンとこない方も多いのではないでしょうか。
日本は、古来から尺貫法で物の長さを測っていました。
しかし、世界的に単位を統一しようというメートル条約が1875年にできると、
日本も1885年に加盟。翌86年に公布されました。
そして1891年に度量衡法(どりょうこうほう)が公布され、
それまでの尺貫法の長さをメートルに換算して定義しました。
この度量衡法の定めでは、一尺が三十三分の十(10/33)メートル。
30.30303030...センチメートル(cm)となるので、
現在、一尺は約30.3cmと捉えるようになっています。
同様に、尺貫法の小さい単位から挙げていくと・・・
一分=約3mm
十分=一寸=約3.03cm
百分=十寸=一尺=約30.3cm
千分=百寸=十尺=一丈=約3.03m
となります。
また、一間=六尺=約1.818mです。
このように、尺貫法はメートルに置き換えると割り切れませんから、
メートル法で造られた舞台を再現するには少々不便がありそうですよね。
それなのに、なぜ演劇界では現在でも尺貫法が主流なのでしょうか。
一つには劇場の作りがあげられると思います。
間口の「間」も長さを現す言葉であるように、
多くの家屋が今でも尺貫法が主流であり、
劇場の舞台も、間口・奥行きなど、ほぼ尺貫法で作られています。
また木材・釘などの材料も同様です。
木材は二間売りが主流ですし、
釘も二寸釘・一寸五分(インゴと呼ばれています)などなど、
要は建築をとりまく環境が尺貫法なのです。
慣れてしまえば、どうということのないこの尺貫法ですが、
演劇界に足を踏み入れたばかりの頃はかなり戸惑うものです。
演出家でも「そこ、もう一尺上手に寄って」などと普通に使うので、
体で理解していないと、
「ええ〜っと、一尺ってどれくらい? 上手ってどっち?」
となってしまうのです。