「世話・世話物」(せわ・せわもの)
一般には「面倒を見る」という意味で用いられる「世話」ですが、
これとはまったく関係なく、歌舞伎や浄瑠璃の世界においては
江戸時代を舞台にした作品のことを「世話物」と呼びます。
歌舞伎は江戸時代に発祥、発展してきたため、
多くの作品が江戸時代に創られています。
ですから、江戸の当時を舞台にした物語が「現代物」で、
江戸以前を題材にしたものは「時代物」となります。
そして「現代物」の多くは、当時の庶民から見て世間の話を題材にしているため、
「世間の話」を「世話」と略し、この言葉が生まれました。
中でも、特に庶民の生活を描いた物語を
「生世話物(きぜわもの)」と言いますが、
義理人情物、恋愛物、散切物(ざんぎりもの)など、どんなジャンルの物語でも、
当時を舞台にした作品であれば世話物に含まれます。
また、夫の面倒をよく見て家庭を手際よく切り盛りする妻という意味の
「世話女房」という言葉がありますが、
歌舞伎では、広い意味では世話物に登場する女房を指したり、
さらに限定的に庶民や町民の女房を指したりして用いられることがあります。