「戯曲」(ぎきょく)
「脚本」(きゃくほん)
「台本」(だいほん)
舞台などで上演するための本を指すこの3つの言葉。
言い換えただけの似たような言葉に思われがちですが、
実は多少違う意味合いで使われています。
まず「戯曲」ですが、「戯」は「たわむれる」と読みますよね。
そして「曲」は「単調ではないふし」という意味で使われています。
曲芸・作曲などと同じ使われ方で、
「たわむれたふし」が「戯曲」の意味となります。
具体的に言えば、劇作家が執筆する
台詞やト書きを中心に書かれた文学作品のことを「戯曲」と言います。
つまり、「小説」「詩歌」などと並び、
文学のジャンルの一つとして「戯曲」があるわけです。
例えば、「ロミオとジュリエット」はシェイクスピアの戯曲の1つである、という感じです。
次に「脚本」ですが、「脚」は「あし」。
物事の土台となる部分を指す言葉です。
つまり「芝居の土台(基礎)となる本」という意味ですね。
戯曲を上演用に書きかえることを「脚色」と言うことからもわかるように、
「戯曲」よりもト書きなどが細かく、
演劇上演を目的とした色合いが濃い作品を指します。
実際に、ある戯曲を上演しようと決定した場合、
そこからその戯曲は「脚本」と呼ばれ出すことが多い感じですね。
例えば、シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」を元に、
自分たちが上演するための脚本を創る、という感じです。
そして「台本」は、昔「台帳」と呼ばれていたのが語源で、
現在「台本」と呼ばれているようです。
「台本」も、実際に上演を目的とした場合の作品を指す言葉で、
基本的に、意味や使い方は「脚本」とほぼ同じと考えても構いません。
綿密な分類するならば、広義の上演のための本を「脚本」と言い、
具体的に、例えば明日上演するための本のことを「台本」と区別する感じでしょうか。
テレビのバラエティ番組を撮影する際、
出演者やディレクターが持っている本を「台本」と言いますが、
「脚本」とは言わないことを考えてもらうとわかりやすいかと思います。
「ロミオとジュリエット」の例ならば、
出演者やスタッフに配布するのが台本という感じです。
また「シナリオ」という表現方法も、この「脚本」「台本」とほぼ同一です。
こちらは、演劇よりも映画などの映像で用いられることが多い言葉ですね。
英語でも「シナリオ(scenario)」で「脚本」「台本」を表しますが、
他にも「スクリプト(script)」が用いられますし、
歌劇やミュージカルでは「リブレット(libretto)」、
映画では「スクリーンプレイ(screenplay)」が使われます。
ちなみに「戯曲」を訳するときは、演劇自体を表す「プレイ(play)」か
「ドラマ(drama)」を用います。
このように、これらは全て似たような言葉ではありますが、
多少違う意味合いで使い分けられています。
ただ、全てにおいて共通することは、
どんな作品でも「筋書き通りにいくとは限らない」といった点でしょうか。