「触り」(さわり)
「この映画のさわりをお見せしましょう」と、
映画の広告などで見どころを指す言葉として使われる「さわり」。
この「さわり」は、浄瑠璃の世界から生まれた言葉です。
浄瑠璃の世界では、昔から他流派との芸術の交流が盛んだったそうです。
自分たちの流派だけにとらわれず、
積極的な芸術向上に努めていたのですね。
そして、他の流派の節を取り入れた部分を「他流派に触る」と言っていました。
この触った部分は、違う流派の節が入るので印象的な節回しとなり、
出し物の大きな見せ場となったそうです。
このことから、曲の一番の聞かせどころを「さわり」と呼ぶようになりました。
やがて、この「さわり」という言葉の使い方が一般に広まり、
浄瑠璃だけでなく幅広いジャンルで、
見どころ・聞きどころを指す言葉として使われるようになったのです。
「さわり」とは、このような語源・意味の言葉なので、
一般に解釈されている「話などの最初の部分のこと」というのが誤用なのはもちろん、
文化庁が行っている「国語に関する世論調査」で本来の意味としている
「話などの要点のこと」も実は誤りです。
文化庁は、同世論調査で「今の国語は乱れていると思うか」という質問をしていますが、
実は文化庁自身が、国語を乱す片棒を担いでいるというわけですね。