「さしがね」 (差しがね)(差し金)(差金)
陰からこっそりと人を操ることを「差し金」と言いますよね。
一般にはあまり使わないかもしれませんが、
ヤクザ物の映画などで「てめえ誰の差し金で・・・」
というような台詞を、耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この「差し金」という言葉は、お芝居から生まれた言葉です。
舞台で、蝶や鳥など空中を舞うものを動かす場面などでは、
黒く塗った竿(竹竿)の先に針金や鯨のヒゲなどを付け、
先端に鳥や蝶の作り物を貼り付けます。
この竿を黒子が動かし、さも単独で動いているかのように見せるのです。
そして、この竹竿のことを「差し金」と言います。
「差し金」を使って空を飛ばしたり、小動物を地面に這わせたりする手法は、
学芸会のお芝居でも用いられるほど、一般的になっていますよね。
しかし、これは江戸時代の頃から歌舞伎で使われていた方法で、
素晴らしき先人の知恵なのです。
また、人形浄瑠璃の文楽人形では、
人形の指を動かすため、左手に長い棒が仕込んであります。
そしてこの棒のことも「差し金」と言います。
つまり、どちらもお客様にわからないように「差し金」を使って操っているわけです。
このように、歌舞伎や文楽で使われていた「差し金」がやがて一般に転じ、
陰で操ることを「差し金」と呼ぶようになっていったのです。