「パントマイム」(pantomime)
パントマイムとは、台詞を使わず、身振り手振りだけで表現するお芝居のことです。
「パントマイム」自体すっかり日本語になっている言葉ですが、
日本語に訳すのであれば「無言劇」「黙劇」といったところになります。
このパントマイムは、大道芸の一つとしても有名ですが、
演劇(芝居)の基礎訓練方法としても、世界的に用いられている方法です。
実際には何もないところで壁やロープがあると想定して演じるということは、
実技的にはもちろん、想像力などの面からも俳優には良いトレーニングになるのです。
「パントマイム」という言葉は、英語で「pantomime」と書きますが、
その元をたどるとギリシャ語の「panto」(すべてを)と「mimos」(模倣する・真似る)。
この「mimos」(ミモス)というのは、古代ギリシア時代に世俗的な話を物真似で演じていたもので、
これがパントマイムの起源だと言われており、
この「panto」と「mimos」が合わさった「pantomimos」(パントミモス)が語源にもなっています。
その後ローマ時代に、歌曲に合わせて物真似などの体を使った(台詞をあまり伴わない)演技が生まれ、
時を経た中世ヨーロッパの頃には旅芸人の芸として受け継がれ、
この頃のコメディア・デラルテ(仮面を使った即興演劇)が、
現在のパントマイムに強い影響を与えたと言われています。
日本語に訳した「無言劇」はサイレント作品なども指すことがありますし、
こうした歴史を鑑みてみても、「パントマイム」=「無言劇」と考えるのは、多少意味合いが違うのかもしれません。
日本においては、能・狂言・歌舞伎といった古典芸能、
例えば、神楽や歌舞伎のだんまり、壬生狂言などにパントマイムの要素を見ることができます。
また、落語においてもマイムは必須ですよね。
これらがヨーロッパからの流れをどれくらい汲んでいるかはわかりませんが、
国民全般に言語教育が確立される以前の時代においては、
「広く人々に理解してもらう」という観点で、パントマイムが重要な役割を担っていた感もあります。
言葉は理解できなくても、動きや仕草で意図や感情は伝えられるものですし、
チャールズ・チャップリンが世界的に人気があるのも、
パントマイムに優れた俳優であったことが最大の要因と考えられますものね。