「大向こう」(おおむこう)
歌舞伎の公演で、「成田屋っ」「音羽屋!」などの屋号や、
「よぉっ」「待ってました」などの掛け声をする人を「大向こう」と呼びます。
観劇に行って、突然の大声に驚かれた方も多いのではないでしょうか。
欧米ではカーテンコールの習慣はあっても、
芝居中(しばいなか)で掛け声の習慣はないので、特に驚かれるそうです。
さて、この「大向こう」ですが、
元々は「舞台から最も遠い客席」という意味の言葉です。
(現在の歌舞伎座でいうと3階席の後ろ側といった辺り)
芝居中で掛け声をかける「大向こう」さんはタイミングが命、
作品に精通していなければ務まりません。
一つの作品を何度も何度も観てくれるお客様が始めた「掛け声」は、
何度も劇場に足を運んでくれるお客様が
安く観劇できる席の名称を指した言葉なのです。
現在も、歌舞伎はもちろん、それ以外の大劇場においても「大向こう」は存在します。
当然、お客様の拍手が声援に変わったもの、というのが大前提なのですが
楽屋におひねり(掛け声代)をせびりに来て、木戸御免(チケット代タダ)で観劇・・・
中にはそんな「大向こう」のプロ?も存在しますが、
本来は純粋なファンの声援ですので、
何度も観劇している作品があれば、是非試してみてください。
場の空気を読んだり、タイミングを掴むのはとても難しいことですし、
そこで実際に声を出すのはとても勇気が必要なことですが、
観客も芝居に参加しているんだという事を、最も実感できるのではないでしょうか。