「おでん」
芋やコンニャク、はんぺん、玉子を煮込んだ日本料理「おでん」
この料理の名前、元をたどると芸能の世界から生まれた言葉です。
日本では古来から、田植えの時に歌や踊りを神様に捧げ、
一年の豊作を祈る、農家の人々による神事「田楽」がありました。
当初「田楽」は農家の人達が自ら催していたのですが、
時代が経つにつれ、「田楽」専門の業者が誕生。
田植えの時期以外にも、人々を楽しませるために活躍していたようです。
お祭りのためのプロ集団といったところでしょうか。
やがてその専門の集団は「田楽法師(でんがくほうし)」と呼ばれ、
やがて様々な芸を披露するようになります。
その芸の一つに「高足(鷺足)」という、
一本足の竹馬に乗って踊る曲芸のような出し物がありました。
この芸は人気があり、田楽法師の代表的な芸となります。
そして江戸時代、豆腐やコンニャクや芋を、串に刺して煮込んだ料理が誕生した際、
串刺しの様子と、田楽法師の竹馬に乗っている様子が似ていることから、
その料理を「田楽(でんがく)」と呼ぶようになりました。
これが現在でも一般的な、串刺しのコンニャクなどに味噌ダレを付けた「味噌田楽」の始まりです。
その「田楽」が女房言葉で「お田楽」と言われていたものが、
後に「おでん」と簡略され、現在のおでんの名称になったのです。
現在、舞台用語としての「田楽」は、
張り物の一部を四角く切り抜き、
その中心に軸を入れ、クルッと回転することで
場面を一瞬にして転換する装置のことを指します。
回転させることを「田楽返し」といい、歌舞伎などではお馴染みですよね。