「ノルマ」(norma)
達成目標や、各人に課せられる仕事などの量を意味する「ノルマ」。
演劇の世界、特に多くの中小劇団や公演においては、
個人の集客責任数、つまり各々が売らなければならないチケットの枚数を
「ノルマ」または「チケットノルマ」と言います。
演劇の公演では、助成を受けたりスポンサーが付いてくれたりしない限り、
おおまかに言えば、チケットの売上げ=公演の収入になります。
人気のある劇団や公演では、発売開始と共にチケットが売り切れてしまうものもありますが、
それは全体から見ればほんの一部。
多くの劇団や公演では、出演者である俳優などにノルマが課せられ、
自らチケットを手売りしています。
チケットノルマのシステムは、劇団や公演によって様々です。
公演のとき、チケットの価格×枚数を各人に割り振って負担させる方法が最も多い形かと思いますが、
普段から劇団の運営費を徴収したり、
公演のとき費用を分担してチケットのノルマは抑える、
またはまったくノルマを課さない、というやり方もあります。
チケットノルマを課せられたのに売り切れなかった場合は、
自腹を切らなければならないことがほとんどです。
売れない舞台俳優は貧乏だ、と言われる最大の要因は、
ノルマを達成できないから自腹を切らなければならない、
しかし公演前にはアルバイトもできない、という負のスパイラルに起因しているのです。
ちなみに「ノルマ」の語源はロシア語で「強制労働の達成量」という意味。
どんな仕事でも同じだと思いますが、
ノルマは強制労働を強いられる面もあるものの、意欲を高める面もあります。
俳優は、チケットを多く売ればそれだけ多くの人に観てもらえるわけで、
モチベーションに繋がっている部分もあるのではないでしょうか。
しかし、大切なのはチケットを買ってくれる知り合いをたくさん作ることよりも、
喜んで観劇してくれる人やファンを増やすこと。
つまり芸で人を呼べるようになることが最も大事なわけですが、
実はこれが一番難しいことでもあるのですね。