人形劇

「人形劇」(にんぎょうげき)

人形劇とは、人形遣いが操る「人形」が演じるお芝居のことです。
しかし、一口に「人形劇」と言っても、
マリオネットやギニョール人形浄瑠璃など、人形の形態やその動かし方には様々な種類があり、
非常に大ざっぱに分類すると、人の手で直接人形を操る「手遣い式」と、
糸や棒などの道具を介して人形を操る形式に大別できます。

手で操るものでは、人形の体の中へ手袋のように手や指を入れて操るものが有名ですね。
これは日本語で「片手遣い人形」と言いますが、
フランス語の「ギニョール(guignol)」という呼び名の方が一般に知られている感じがします。

道具を使うものでは、糸で吊られた人形を操るものが有名でしょうか。
こちらは日本語で「(糸)操り人形」となりますが、
やはり元々フランス語である「マリオネット(marionette)」という呼び名が知られていますね。
ちなみに英語でも「マリオネット」で糸操り人形のことを指しますが、
厳密な固有名詞として使われているとは言い切れず、
マリオネットは広義の人形劇全般を指しても用いられています。
また、やはり日本語としても使われることの多い「パペット(puppet)」も操り人形のことですが、
こちらは主に、指人形や手遣い人形を指すことが多いのではないでしょうか。

他にも、「セサミストリート」で知られる「マペット(mappet)」や、
ティム・バートン監督の映画「コープス・ブライド」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」に代表される
ストップモーション・アニメーション(人形アニメ)や、型紙を創って行う影絵など、
人形劇に数えられるものは非常にたくさん存在します。

この人形劇の歴史は把握できないほど古く、
世界中の地域や民族において、宗教的・娯楽的・個人的など様々な用途で生まれ、発展してきました。
子供が人形を動かして遊ぶことも、一種の劇、演じることだと考えると
人形の歴史=人形劇の歴史と言えるかもしれません。

そして日本には、世界無形遺産にも選定されている人形浄瑠璃(文楽)があります。
人形浄瑠璃は、一体の人形を何人かで操り、
しかも「太夫(たゆう)」「三味線」「人形遣い」と、舞台での役割が完全に分業となっている、
世界的に見ても非常にオリジナリティのある人形劇です。

この人形浄瑠璃は、元々は大道芸として演じられていた人形芝居と、
音楽に乗せた語り物が結びつき、安土桃山時代(1600年頃)に始まりました。
しかし、日本においても有史以前から宗教・娯楽的な人形劇が存在したと言われていますし、
現在の日本でも、文楽や子供向け以外に、
人形劇を専門に行っている劇団なども多数存在し、様々な形で人形劇は行われています。

人が演じることもできる演目でも、
わざわざ手が掛かり、表現力の乏しい人形を作って表現する・・・
一見、無駄な手間のようにも思えますが、
生身の人間では伝えにくいことや表現できないことを人形に託すことで、
完全に別世界の物語にできたり、キツい内容が柔らかい雰囲気になったりするわけです。
そうした制作者側の意図を考えてみると、人の芝居よりも奥深さを感じることができるかもしれません。

「人形劇」奥付

  • Posted : 2009年6月 2日 00:52
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