「二重舞台」(にじゅうぶたい)
「二重舞台」とは、舞台本来の床の上に平台や馬(足)などを置いて床を高くした舞台のことです。
舞台面とあわせて床が二つあるために「二重」と呼ばれるようになったようで、
単に「二重」と言う場合は、高くするための大道具である台のことを指すことが多いと思います。
この「二重舞台」は、舞台を観に行けば必ず目にすると言っても良いほど、頻繁に用いられる舞台装置です。
例えば、山や土手など高さのある風景がそうなのはもちろん、
家屋のセットも舞台上に創られるので「二重舞台(屋台)」と言います。
最近、テレビでおなじみの雛壇も二重舞台の一種と言えますし、
つまり、舞台面より一段高くなっていればほとんどが「二重舞台」で、
反対に二重になっていない舞台のことは「平舞台」「地舞台」と言います。
また、「走り込み」を可能にしているのも二重舞台です。
(雛壇とは、その名の通り雛人形の段のように、二段以上ある場合に用いられます。)
そして、この二重舞台を造る大道具の「二重」は、
台の大きさに定型があり、大きさよってそれぞれに呼称がつけられています。
1尺4寸(約42cm)の物が「常足(つねあし)」、
2尺1寸(約63cm)の物が「中足(ちゅうあし)」
2尺8寸(約84cm)の物が「高足(たかあし)」。
二重は、ほとんどの場合何かの台になる物ですからバラバラの大きさでは不都合が多く、
特に歌舞伎などの古典芸能では、上記の大きさの物が定番として用いられています。
そして、例えば普通の民家は常足、高い土手などは高足などと、
何を造るにはどれを使うかというのも、だいたい決まっています。
また、その大きさは7寸(約21cm)刻みに出来ているのもわかりますね。
この「二重」は奥が深いものです。
ワゴンが付いていて移動可能な二重(引き枠)や、
転換ごとに組み替える仕組みになっている二重など、
普段お客様が何気なく視界に入っているだけであろう足元の大道具にも、
実は細やかな演出で、パズルを組み立てるようなセットも使われているのです。