ネコ

「ねこ」(ネコ・猫)

家屋のセットなどで襖(ふすま)や引き戸がある場合、
普通の家のようにきちんと戸が閉まるように作ると、
演技の際に取っ手から手が滑るというミスが起こる可能性があります。
取っ手から手が滑って・・・なんて経験、誰にでもありますよね?

上演中は、この「滑る」というミスが致命的になる場合があるので、
戸の端に3cm位の小さな木片などが付けられています。
つまり、戸が閉まっているように見えて、実はちょっと隙間がある状態です。
舞台上の俳優は、その隙間に手をかけることにより、
確実に戸を開け閉めすることができるわけです。

そして、この小さな木片(小割)を「ねこ」と言います。
すべり止めや止め木などに使用する短材を英語で「cleat」(クリート)と言いますが、
日本の建築業界では「ねこ」と呼ばれており、
それがそのまま大道具の世界でも使われるようになったものと思われます。
しかし、このように(かすがい)や手掛かり、転び止めのように使う物を「ねこ」と呼ぶのであって、
小割や木片、木っ端、ヌキなどの材料自体や、
それらすべてが「ねこ」と呼ばれるわけではありませんのでご注意を。

この「ねこ」は、セットの下に打ち付けても使用します。
つまり道具の足になるようなもので、
滑らせて容易に舞台上を動かしたり、セットや舞台を傷つけない役割を果たしています。
舞台では、このようなちょっとした工夫が他にもたくさんあり、
毎日の公演を陰ながら支えているのです。

「ネコ」奥付

  • Posted : 2009年6月28日 02:27
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