「奈落」(ならく)
舞台演劇における「奈落」とは、
劇場の舞台床下(地下)にあるスペースのことを指します。
奈落は、単に通路としても使われますが、
回り舞台や迫りの舞台装置があり、舞台機構の一種とも言えます。
現在は機械(電動)で動く回り舞台も、
昔はもちろん手動だったため、この奈落で働く裏方がいました。
舞台上で回転する盆を、人力で回す人たちが奈落にいたわけです。
また「奈落」という言葉は、劇場の地下部分全体を指しても使われます。
舞台だけでなく、花道の下にも奈落がある劇場もあって、
俳優の素早い移動のためなどに通路として使われていることも。
観劇しているお客様の足下を、今まで舞台に出ていた俳優さんが歩いている、なんてこともあるわけです。
「奈落」という言葉は、一般には「地獄」や「どん底」という意味で使われますね。
語源は、梵語の「naraka」の音写「奈落迦」から転じたものと言われ、
「地獄」といった意味合いでは「那落」「捺落」と表記することもありますが、
舞台機構の「ならく」を意味する場合は「奈落」と書きます。
昔の劇場の地下は、地面を掘ったままで「湿気が多く」「汚く」「薄暗く」と、
まるで地獄のような場所だったため「奈落」と名付けられたと言われています。
そして、そんな大変な場所で働いている人たちを「縁の下の力持ち」と呼んだのですね。
また、この「奈落」は「奈落に落ちる」ということわざも生み出しています。