「ミュージカル」(musical)
ミュージカルとは、歌と音楽・台詞・ダンスで構成された芝居のことです。
物語のジャンルとしてはシリアスなものからコメディまで様々ですので、
ストーリーの内容で分類されるものではなく、
作品形態における1つのジャンルと言えそうです。
現在、日本の舞台においては、ストレートプレイである演劇、
歌舞伎や文楽などの古典芸能と並んで、
ジャンル分けする言葉として用いられることが多いのではないでしょうか。
ミュージカルの歴史は100年程で、まだまだ新しいジャンルと言えます。
元を辿ると、もちろんイタリアのオペラに行き着きつくわけですが、
源流は、1700年代前半にオペラから派生して生まれた
イギリスのバラッド・オペラや、フランスのオペラ・コミックと言われ、
直接的には1800年代中頃、オペレッタがアメリカに渡り、
ダンス中心のレヴューと交わったことで誕生したと言われています。
きちんとした脚本に、歌と踊りを組み込んだ
現在のようなミュージカルは1920年代に確立されたもので、
1927年にブロードウェイで初演された「ショウ・ボート」が最初の作品と言われています。
このようにミュージカルの歴史がやや曖昧なのは、オペレッタや音楽劇との
ジャンル分けが難しいところにも一因がありそうです。
ジョン・ゲイ作の「乞食オペラ」は1728年ロンドンで初演され、
これはバラッド・オペラと判断されることが多いのですが、
1750年にアメリカで上演された同作がミュージカルの最初という見方もされています。
1928年、同作をブレヒトが翻案した「三文オペラ」 を上演する際、
日本では音楽劇と名乗ることが多いですし、
東宝が上演する「ベガーズ・オペラ」はミュージカルとなっています。
またミュージカルは、作品の構成から発声法、使われる楽曲のジャンルなど
全てにこれといった決まり事がないため、
そういった方向からも定義付けるのが困難だと言えます。
しかし、敢えて他の舞台芸術との違いを挙げると、
その発祥や歴史の新しさからか、公演でPAを使うことが当然となっており、
大劇場で行う商業演劇的である点が大きいのではないでしょうか。
また、そのためか映画やテレビ、ショーなどとも柔軟に融和しており、
舞台芸術におけるジャンルの1つに留まっていないことも挙げられます。
つまり、ともすれば文化や芸術という観点から堅苦しく思われがちな演劇に比べ、
ミュージカルは一般大衆、お客様が望むことを実現していっているとも言えそうです。
ですからミュージカルは、今後も時代やメディアの変化に対応し、
進化、発展していくものなのではないでしょうか。
■ミュージカル作品ごとの紹介