「客いじり」(きゃくいじり)
通常、演劇などの舞台公演では「演じる側」と「観る側」が存在するわけですが、
演じる側が観る側に何らかのアプローチをする、
つまり演者がお客様を巻き込むことで成立する、芸や手法のことを「客いじり」と言います。
「客いじり」は、お笑い芸人の芸として有名になっていますが、
演劇の世界でも、お客様を巻き込む手法という同じ意味合いで使われます。
例えば、出演者が客席に入ってお客様を群衆の一員として扱ったり、
お客様を舞台に誘導して登場人物の一人として扱ったり・・・
様々なジャンルの舞台で、こうした「客いじり」を取り入れた公演が行われています。
一般的に、演劇などの舞台公演では、
客席と舞台上はまったくの異空間として扱われ、
舞台の上では非日常・非現実的な物語の世界が繰り広げられます。
しかし、出演者が客いじりをすることで、
普段は現実世界から観るだけの存在であるお客様を、
芝居の中の世界に誘うという効果を狙っているわけです。
また逆に、物語の世界の外から解説役などを務める狂言回しが、
現実世界に居るお客様の中に入ってきて、
芝居の傍観者としてお客様と視点を共有するという方法もあります。
これは、舞台上で演じられているものが芝居であることを意識させるメタフィクションの手法で、
劇中劇のある作品などで用いられるものです。
このように、演劇における客いじりは、
単にお客様の気分や雰囲気を盛り上げるといった意味だけではなく、
演出や作品において大きな意味を持っていることがほとんどです。
いずれにせよ、客いじりはライブである舞台公演ならではのものですし、
客いじりが行われる作品に出会ったら、
「なぜそれが行われたのか?」という視点で考えてみると、
作品の意図がより理解できるかもしれませんよ。