「食う」(くう)
「食われる」(くわれる)
「食う」とは「何かの範囲・領域などを侵す」という意味合いで、
いろいろな意味・用途で使われる言葉です。
まず、俳優が共演者の台詞に被せて台詞を言ってしまうことを指します。
つまり、他の俳優が台詞を言っているとき、
早まって一緒に台詞を発してしまうような場合ですね。
これは、台詞を発する順番やタイミングを間違えるという単純なミスで起こるわけですが、
その後の対処をも誤ってしまうと、物語の進行がおかしくなってしまうのはもちろん、
観ているお客様に話が伝わらなくなってしまい、致命傷となってしまうことも。
俳優にとって、絶対にしてはならないミスの1つですね。
また、テンポやリズムが前のめりになること、
音楽のシンコペーションのことも、拍を「食う」などと言います。
台詞や会話でかぶせ気味に入っていく場合にも用いられ、
「食い気味に〜」などと、一般にも使われているのではないでしょうか。
ちなみに、リズムの場合の「食う」の対義語は「もたれる」です。
他にも、台詞や台本の一部をカットすることを「食う」と言いますし、
照明が幕や道具などに遮られてしまうことも「食われる」と言います。
それから、ある俳優が共演者より際だった存在感を出してしまうこと、
演技が優れて他の俳優を凌いでしまうことも「食う」と言います。
この場合、被害者側が「食われる」ですね。
この存在感や演技力で「食われる」ということは、
俳優にとって最もと言ってよいほど恐ろしいことです。
特に主役をもらった俳優が、共演者に「食われている」と多くの人に思われてしまった場合・・・
厳しい現実を突き付けられる可能性が高いわけです。
しかし、俳優がどんなに頑張っても勝てないのが「子供と動物」。
テレビでも「視聴率が悪くなったら子供か動物を出せ」と言われますが、
純粋無垢な子供や動物を見ると、誰もが目を細めてしまいますし、
俳優がどんなに頑張っても、食われてしまうのは仕方がないところですね。