「放送禁止用語」(ほうそうきんしようご)
放送禁止用語とは、テレビやラジオ等の放送業界が自主的に規制している、
差別用語や猥褻な言葉などのことです。
放送禁止用語=使ってはいけない言葉、と認識されている節もありますが、
テレビやラジオ等の放送は不特定多数の人に情報を発信するメディアであるため、
健全性や無難さを追求し、多くの言葉を自主規制しているのが実情です。
また、あくまで自主規制ですから共通のガイドラインはありませんし、
局や放送時間帯、番組の内容によって規制の程度も変わっています。
ですから、放送ではない舞台演劇や映画などでは、
人権や公序良俗に配慮するのは当然なものの、
作品のテーマによっては、差別的な用語であっても敢えて用いられることがあります。
しかし、こうして創られた作品は、テレビなどで放送される際に問題になることも。
有名なところでは、ゴダール監督の映画「気狂いピエロ」は、
「きちがい」と読むと放送コードに引っかかるため「きぐるい」と読ませていましたが、
最近では原題の「ピエロ・ル・フ」(Pierrot Le Fou)と表現することが増えてきています。
邦画では、勝新太郎の「座頭市」に「めくら」という放送禁止用語が頻出するため、
テレビで放送される際にはピー音だらけになってしまっています。
そもそも、この手の映画はテレビ放送自体避けられる傾向で、
映画史に残る名作と言われるこの2作も、テレビで放送されることはほとんどありません。
映画でさえこのような状況ですから、舞台など以ての外といった感じなのが日本の現況です。
けれども、海外では以下のような事例も存在します。
2004年のオリヴィエ賞で作品賞を受賞した
ミュージカル「ジェリー・スプリンガー=ジ・オペラ」(Jerry Springer - The Opera)は、
作中にかなりの数の放送禁止用語を含んでおり、
イギリスの公共放送BBCで放送されることが発表されると賛否両論が噴出し、
日本でも報道される程の大きな論争を巻き起こしました。
当然BBCにも苦情や抗議が殺到したそうですが、
BBC側は作品を援護し、結局予定通り放送を行いました。
これが日本、つまりNHKがどういう方策を取るのかと考えるとBBCの英断がわかりますし、
引いてはその国における芸術への理解度などが伺えますね。