「きっかけ」(切っ掛け)
動作などの開始の合図になることを「きっかけ」と言いますよね。
他の言葉に置き換えると、
「いとぐち」「手がかり」「はずみ」「機会」といったところでしょうか。
演劇界でも同じような意味、
つまり舞台進行の際に、転換などの合図になるような事柄を指して用いられます。
映画やテレビ業界では「キュー(cue / Q)」とも言いますね。
お芝居の世界では、俳優が舞台に登場したりはけたりする「きっかけ」や、
音楽を流す「きっかけ」、照明の「きっかけ」など、
たくさんの「きっかけ」があります。
様々な「きっかけ」のもとに、計算されて一つの舞台が出来上がっているのです。
この「きっかけ」という言葉は、漢字で書くと「切っ掛け」で、
「きる」と「かける」の合成語です。
「きる」は「〜きる(例:やりきる)」と動作の終わりを表し、
「かける」は「〜かける(例:食べかける)」のように動作の最初を表します。
つまり、一つのことが終わり、新たに次のことが始まることを指しているわけです。
そして、この「きっかけ」の語源に、面白い説があります。
「きっかけ」とは、歌舞伎独特の表現方法である「見得」を合図に、
場面転換の用意などで、裏方達が走っている様子から来た言葉、というものです。
つまり、「きる」は歌舞伎の「見得を切る」の「切る」、
「かける」は、裏方さんが「駆ける」。
見得を「切る」のを合図に「駆ける」から「きっかけ」というわけですね。
これはあくまで一説に過ぎませんが、
広く演劇界でこうした合図や手がかりのことを「きっかけ」と呼ぶのは
歌舞伎の世界で使われていたことに由来しますし、
少なくとも演劇界で使われる「きっかけ」に関しては、
これが語源なのかもしれませんね。