「消し幕」(けしまく)
舞台の転換時などに、はけたりしまったりする物を
黒などの幕で隠してしまう方法がありますが、
その隠すための幕を「消し幕」と言います。
「消し幕」は「幕」という名前が付いていますが、
その用途ゆえ、他の幕のように吊って使うことはほとんどなく、
多くの場合、黒子が持ってくるなどして使用します。
色は舞台上からなくなったことを表す黒のことが多く、
大きさは隠す対象物によってまちまちです。
また、歌舞伎では毛氈という獣毛でできた織物を使うこともあります。
「消し幕」は、元々歌舞伎から生まれた技法・名称です。
それが現代劇でも同じように転用されているわけですね。
実際の舞台の上演では、
例えば、下手から上手へ場面が変わった際、
下手に明かりが付いていなくても、上手にあてられている照明があるので、
下手で転換などをしていても、うっすらと見えてしまいます。
そんな時、「消し幕」でそ〜っと覆い、その間に転換などをするわけです。
また、暗転中でも客席の非常灯などの影響で、
白っぽい服を着た役者はうっすらと見えてしまうので、そんな時にも使用します。
一番多い用途は、劇中で死んでしまった役者をはけさせるときでしょうか。
ただ、いくら消し幕とはいえ、実際は布をかけたりするだけですから、
見ようとすれば見えてしまうものです。
お芝居の演出のお約束として、消し幕で隠した物は見えないことになっていますし、
お客様が気を取られないように用いている演出方法ですので、
これはここだけの話として、観劇中、無理に見ようとはしないでくださいね。