「蹴込み」(けこみ)
階段の踏み板と踏み板の間にある縦の板部分、
玄関で高さ数センチの立ち上がり部分などを「蹴込み」と言います。
わかりますでしょうか?
つまり、地面と垂直にあり、
歩いているとつまずいたりする原因となる、段差の部分のことです。
演劇界でも、地面に対して垂直になる部分のことを「蹴込み」と言います。
例えば劇場では、二重舞台の前側面、家屋ならば縁の下に当たる部分、
道具では、屋台や階段の前面あるいは側面の張り物などを指します。
「蹴込み」という言葉は、
「足や汚れが入らないように」「建築上の補強」という意味で、
建築の世界から生まれたと言われています。
形は違えども、同じ「建築」を生業とする大道具の世界においても、
同様の意味で使われ始めたのでしょうね。
舞台上で使われる「蹴込み」は、
お客様の目には岩・コンクリート・重厚な板と見えても、
近付いてみると実は薄く・軽いものでできていることがほとんどです。
色を塗り、重厚な材質に見せかけた薄いベニヤ板が使われることが多いのですが、
材質感を出すために、発泡スチロールが使われることもあります。
移動式の家屋セットで、縁の下部分などは特に気を使います。
床面との間に隙間がなくては移動の時擦れてしまいますし、
逆に隙間がありすぎると、見た目が悪い上、裏の明かりが漏れてしまいます。
ですから、演劇界の「蹴込み」は、建築界の「補強」という意味よりも、
「見た目」「軽さ」などが重要視されることが多いのです。
しかし、それ故に事故が起こることも・・・
「蹴込み」を本当に「蹴り込んで」しまう俳優がいるのです。
石に見えてた縁の下に足先が「ズボッ!」(笑)
俳優は、足の指を石にぶつけてイタタ・・・となるより良いかもしれませんが、
それで道具を壊されてしまったら、裏方さんの方が痛いかもしれませんね。