「紙芝居」(かみしばい)
紙に書いた絵を見せながら、物語を語り聞かせる紙芝居。
昭和30年頃(1950年代)を境に衰退し、
現在の日本では実演を目にすることが難しい伝統芸ですが、
アジア各地では、日本発祥の商売(芸事)として今も行われているようです。
発祥は明治中期といわれ、
縁日や催し物の場で絵を使った語りがあったようです。
大正・昭和と、紙芝居の伝統は受け継がれつつ、その形を変えていくのですが
1930年、小松武雄が作った「魔法の御殿」という作品が、
後の紙芝居界の原型を作るとともに人気を集め、
世界恐慌の余波で失業者が多発していた当時、
全国で5万人という紙芝居屋さんを生むことになります。
そして翌1931年、大ヒット作・冒険活劇「黄金バット」が生まれ、
子供達の間で大流行しました。
こうして隆盛を極めていく「街頭紙芝居業」なのですが、
上演料の変わりに飴を売って収入を稼いでいたため、
駄菓子屋の売り上げが落ちたということで訴えられたり、
人気を集めるため内容が過激になって取り締まられたり、
戦時中は「国策紙芝居」としてプロパガンダに利用されたり・・・
と、波瀾万丈な運命をたどります。
戦後、戦争で職を無くした人や復員兵などがこぞって紙芝居を始め、
街頭紙芝居は再び自由を取り戻して復活します。
しかし、戦後しばらくはニュース・娯楽といったニーズに応えていた紙芝居でしたが、
時代の移り変わりと共に、その座を他の物に譲っていったのでした。
現在、日本がアニメや漫画の世界において先進国なのは、
物語を絵と台詞で表す、この「紙芝居」から続く歴史のおかげかもしれませんね。