早替え

「早替え」(はやがえ)
「早替わり」(はやがわり)

「早替え」とは、文字通り衣裳を「早く」「替えて」舞台に現れる演出のことです。
「早替わり」というのも同じ意味なのですが、
歌舞伎など古典芸能では「早替わり」と言い、口語では「早替え」と言うことが多いのではないかと思います。

時代や場面が次々に変わることの多い舞台演劇の世界では、
この「早替え」に関し、昔から様々な工夫が凝らされてきました。
糸を1本抜くと脱げるように衣装を作ったり、裏返すと違う衣装になったり・・・
現在ではマジックテープという優れたものがありますので、
装着に時間のかかる着物の帯やワイシャツのボタンなどを貼付けるだけにしておいて、
テープをはがせばすぐに脱げるようになっているという工夫はよく見られます。

ところで、以前どこかの劇場でアンケートを取ったところ、
観客が早替えを「おっ、早い」と感じる時間は2分までだったそうです。
一度はけた俳優が再び舞台に現れるのに、
どんなに大変な着替えをしていたとしても、2分以上経過していると効果は半減してしまうということですね。
お客様は、裏でどんな大変な着替えが行われているのかはわかりませんし、
俳優や裏方は大変ですが、早替え自体を魅せる場合には大事な指標になりそうです。
しかし実際は、芝居の進行をスムーズにする狙いで早替えが行われることが多いので、
お客様が想像する以上に、お芝居には「早替え」が存在しています。

このため劇場では、舞台裏にも色々と工夫が凝らされています。
例えば、はけた俳優が楽屋まで帰る時間がない場合、
舞台袖に通称「鳥かご」と呼ばれる着替える場所を設けたりします。
この鳥かごは囲いのようなもので、着替えが見られないように、明かりが漏れないように、
大道具さんによって作られることが多いものです。
また、俳優が舞台上から上手にはけて、上手から出る場合は良いのですが、
例えば上手にはけて、迫りから出るような場合は、
ある意味舞台上より必至に奈落を走る俳優がいたりします。
本人はもちろん一生懸命なのですが、想像するとちょっと楽しくありませんか?

「早替え」奥付

  • Posted : 2009年8月12日 02:14
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