「走り込み」(はしりこみ)
多くの場合、舞台にはセットが組んであり、
舞台に何もない状態のときより、足元が高くなっています。
そこで、主に俳優が出入りするときのために、
舞台セットと同じ高さに足場のような大道具が備えられており、
これを「走り込み」といいます。
走り込みは、二重舞台が組まれている場合に用いられ、
例えば、お客様からは見えない袖から舞台上へ繋げたり、扉や玄関の裏側などに設置します。
これは、俳優が駆け足で出ハケしたり、
大道具をセットしたりするという利便性の面もありますが、
段を登って登場したのではなく、さも遠くから歩いて来たように見せかけたりするなど、
演出の面でも重要な役割を果たしています。
しかし、舞台袖の狭い小劇場では、お客様の目線から外れて数歩で壁なんてことも。
そのため、走り込みを設置する以外にも俳優の入退場には様々な工夫が凝らされており、
例えば、走って退場する俳優を守るためにクッションを使ったり、
足音がだんだん遠ざかっていくように音響を使ったり・・・
脚本や演出において、こうしたい!という思いは誰しもあるものですが、
劇場や舞台の構造上、どうしてもそのままでは実現不可能なことも出てきてしまいます。
そうした際にも、このようなセットを上手に使い込めるかどうかが、
俳優やスタッフの力量を問われる部分でもあるわけですね。