「橋掛かり」(はしがかり)
能舞台(能や狂言の舞台)には、下手奥に本舞台と鏡の間(出待ちをするところ)とを繋げる
10〜15m程の長い渡り廊下があり、
この渡り廊下部分のことを「橋掛かり」または「橋懸かり」と言います。
橋掛かりは、欄干や屋根のある長い廊下で、
微妙な傾斜(舞台に向かう登り坂)がつけられています。
これは、観客から見て遠近感が感じられるように設計されているもので、
橋掛かりは単にシテ(役者)が入退場をするための道ではなく、
「あの世とこの世の架け橋」という意味を表すなど、
歩くことで何かを表現する、演出の一部としての役割も果たしているのです。
歌舞伎では、観客席の下手側に
キャットウォークのように細長い花道が設けられていますが、
元々は歌舞伎の舞台にも橋掛かりが存在し、
これが本舞台に吸収されていったことで、
代わりに花道が生まれたという説もあります。
能舞台では、鏡の間と橋掛かりの間に揚幕があり、中を隠しているわけですが、
歌舞伎でも鳥屋の入口に揚幕が掛けられています。
もちろんまったく同じ物ではありませんが、両者に共通点があるのがわかりますね。