「張り出し舞台」(はりだしぶたい)
「前舞台」(まえぶたい)
劇場にはプロセニアム・アーチという舞台と客席を区切る額縁があり、
通常ここに緞帳が設置されています。
このプロセニアム、緞帳より前(客席側)の舞台を「前舞台」と言います。
そして、舞台の一部分が客席に向かって突き出ている舞台のことを「張り出し舞台」と言います。
舞台形式に関しては、様式によって細かく呼称がつけられている場合が多く、
明確に区分けするのは難しいのですが、
ファッションショーでお馴染みのキャットウォークやエプロン・ステージ、
歌舞伎の花道なども広義には張り出し舞台に含まれます。
要は、舞台の一部が客席に囲まれた舞台が「張り出し舞台」だと考えればよいと思います。
この張り出し舞台形式の歴史は古く、古代ギリシャ演劇の時代からあると言われています。
現在では、その形状から出臍という呼び名が使われることも多いようですね。
張り出し舞台は、客席の中に舞台の一部がある感じになるので、
舞台と客席の一体感が生まれやすくなるというメリットがあります。
ですから、お客様も一緒に舞台を創り上げてほしい、という演出上の意図がある
中小の劇場で上演される作品に多く用いられている舞台様式です。
また、張り出しがあると、緞帳を背景のように使うこともできるので、
緞帳前で芝居を続けながら(緞前芝居と言います)、大がかりな転換を緞帳の中で行うこともできます。
緞前芝居の次は、ガラッと変わったシーンやセットになることが多く、
これも舞台を観劇する際の醍醐味の一つなのではないでしょうか。
この張り出し舞台は、劇場や演出によって使われる形が違うことが多く、
たいてい大道具さんが演目ごとに造っています。
それぞれの劇場にあわせて「張り出し」を作る作業は簡単ではなく、
足(土台)を組み、平台を乗せ・・・・と、
大道具の人にとってもっとも大変で時間のかかる作業の一つです。
ちなみに「張り出し舞台」は英語で「thrust stage」。
「thrust」は「突き出す」というような意味ですから、日本語と同じように「張り出した舞台」という意味になります。
しかし、意味としてはほとんど同じながら、
ミュージカルなどの舞台で使われ、日本語としても一般的になってきた
「エプロン(apron stage)」という言葉もあります。