花道

「花道」(はなみち)

歌舞伎の舞台には、舞台下手側から観客席の中を貫くように張り出して作られた通路があり、
これを「花道」、または「本花道」と言います。

海外で公演が行われることも多い歌舞伎ですが、
英語での紹介等を読むと、花道のことは張り出し舞台と説明されていることが多いようです。
日本では花道自体が有名なためか、あまり同一視されることはありませんが、
舞台の構造的に考えると、キャットウォークのような張り出し舞台は、同じようなものと考えても良いかもしれません
ちなみに、演目によっては上手側にも花道を設ける場合があり、こちらは「仮花道」と言います。

さて、この花道の一方は舞台に通じているわけですが、
もう一方は客席後方につながっており、終点には揚幕が掛けられています。
ここを通って、役者が入退場するわけですね。
そして、この揚幕をくぐると鳥屋があり、
舞台をはけた役者は、奈落や通路を使って楽屋や本舞台へ移動しているわけです。

歌舞伎のための劇場では、この下手側の花道は常設されており、
このように役者が入退場に使うのはもちろん、
七三(舞台へ三分、揚幕へ七分)の位置では、芝居を演じたり、見得を切ったりします。
また、この七三の位置にはすっぽんが設けられている劇場も多く、
演目によっては、奈落から役者が登場!などというように使われます。

このように、歌舞伎を象徴する代表的な舞台機構である花道ですが、
元は能舞台の橋懸りであり、それが舞台の拡張と共に現在のように変形したもの、
あるいは橋懸りがなくなって代わりに出来たものだと言われています。

そして、この「花道」という言葉ですが、
元々はお客様が役者に纏頭(てんとう=祝儀)を持っていくために設けられた道であり、
物を贈るときには花の枝につける風習があることから、纏頭のことを「花」と呼ぶようになり、
この通路も「花道」と呼ばれるようになったという説があります。
あくまで一説に過ぎないのですが、今でも祝儀などを「花代」と言うことがあることを考えても、
なかなか納得できる語源のような感じがしますね。

ちなみに宝塚歌劇では、劇場の舞台左右にある、壁に面した通路のことを「花道」と呼んでいます。
以前の宝塚大劇場には、歌舞伎と同じように舞台から客席へと突き出した花道があったのですが、
花道の代わりに銀橋が使われるようになり、舞台の上下にある細い通路のような部分が「花道」と呼ばれるようになっています。

「花道」奥付

  • Posted : 2009年8月 7日 01:43
  • Prev : « バトン
  • Next : バナナの叩き売り »
  • Category : 舞台 | 舞台・演劇用語 | シアターリーグ