「不条理演劇」(ふじょうりえんげき)
「不条理」とは、道理に合わないこと、筋が通らないことを意味します。
具体的には、人と人、人と世界との関係が非合理なことで、
語源はフランス語の「absurdite」。(英語では「absurd」)
アルベール・カミュが用いたことから、現在の用法になったと言われています。
そして「不条理演劇」とは、そうした人の不条理さを表した演劇のことです。
具体的には、人が生きることの不毛さ、生と死、
道理や条理では割り切れない人の不条理さなど、
つまり人の存在そのものを問うている演劇だと思われます。
発祥は1950年代、フランスを中心に欧米で興った前衛劇で、
代表的な作家として、カミュの他にベケット、イヨネスコなどがいます。
日本では、別役実が代表的ではないでしょうか。
不条理演劇には、カミュの「カリギュラ」のように、
理に叶った条理的な物語や登場人物の行動の裏から人の不条理性を訴えかけるものと、
ベケット「ゴドーを待ちながら」のように、物語や登場人物の行動そのものが不条理な作品に大別することができます。
特に後者に関しては、演劇自体が不条理なものとなってしまうため
「反演劇(アンチ・テアトル)」(Anti theatre)とも呼ばれます。
似たような意味で用いられる「シュルレアリスム」(シュール)は、
夢や無意識下の世界で不意に強く感じる現実的な感じ、「超現実」を露呈させようとした芸術のことです。
ですから、「非現実的」といった意味を表す場合は、
「シュール」よりも「不条理」を使用した方が適切なのかもしれません。