「演出」(えんしゅつ)
「演出家」(えんしゅつか)
演劇や映画、テレビなどにおいて、
脚本や台本をもとに、俳優の演技はもちろん、
照明・音響などの効果や装置・美術などを利用して、
作品全体を創り上げることを「演出」と言い、
その役割を担う人を「演出家」と言います。
ちなみに、演劇においては「演出」という呼称で定着しているこの仕事も、
テレビのバラエティ番組などでは「ディレクター」、
映画は「監督」と、なぜか業界によって言い回しが変わっています。
英語では、演出が「direct」(ディレクト)で、
演出家が「director」(ディレクター)、
制作を担当する人が「producer」(プロデューサー)ですから、
テレビ業界が英語をそのまま使っている感じですね。
なお、演劇における舞台監督を英語では
「stage manager」(ステージ・マネージャー)というような言い方をします。
よく「映画は監督のもの、舞台は俳優のもの」と言いますが、
もちろん舞台においても演出家の役割は非常に大きなものがあります。
同じ戯曲を上演しても、演出家の解釈次第でまったく違う作品になりますし、
その表現方法も演出家の考えに基づきます。
また、俳優だけではなくスタッフやプロデューサーなどとも折衝しますし、
大所帯になることの多い映像作品に比べ、少人数で創ることの多い舞台芸術においては、
すべてを取りまとめていく、幅広い視野や能力が必要なのです。
演出家は資格の必要な職業ではありませんが、結果が全ての芸術の世界。
誰でもできることだからこそ、誰にでもできることではないのがわかりますね。
では日本を代表する劇団の1つである、宝塚歌劇団の演出家を詳しく見てみると・・・
宝塚における演出家は、ほぼ宝塚歌劇団専属であり、
上演される作品のほとんどで、脚本と演出は一人で担当しています。
宝塚歌劇団の公演は、芝居とショーの二本立てのケースが多いのですが、
その両方に演出家がおり、公演の規模によって異なるものの、
その演出家の下に演出助手が数名いるという形が多くなっています。
では、どうすれば宝塚歌劇団の演出家になれるのかというと、
宝塚歌劇団に入団し、まず演出助手として演出家の下で修行をするのが一般的です。
やがて実力や経験がついてくると、関わった作品の新人公演の演出を任されるようになり、
次にバウホールなど小規模公演の演出を担当し、晴れて演出家デビュー。
その後、本公演の演出を任されるようになって、初めて「一人前の演出家になった」と言えそうです。
演出助手の仕事は、スケジュール調整など、雑用に感じることが多いものですが、
演出家がイメージする作品を同じように理解し、
その上で稽古の段取りなどをする必要がありますので、
見方によっては自分で演出するよりも難しい面があるかもしれません。
そしてまた、その仕事内容も非常に多岐に渡るため、
大きな作品では数名の演出助手がいる場合もあります。