「バトン」(Baton)
舞台の上部、天井付近にあり、物を吊るための棒を「バトン」と言います。
舞台の天井の方を眺めると、葡萄棚に吊るされた何本もの棒が、
多くの場合舞台と平行に、上手から下手まで舞台いっぱいの長さで並んでいるのを確認できると思います。
この棒がバトンです。
バトンは劇場に備えられている舞台機構の一種で、
幕や照明、舞台で上下する道具など様々なものを吊って使用します。
バトンは、劇場によって本数や長さ、形状などは様々なのですが、
多くの場合、綱元や操作盤にある装置で昇降(上下)できるようになっており、
例えば、背景となるドロップを吊って場面転換を行う、といった使い方をします。
他にも、音響や照明の装置を吊って芝居中の効果として動かすこともありますし、
様々な道具やセットを吊って使うこともあります。
このように、バトンは非常に多用途な装置のため、細かく呼称がつけられています。
まず、多くの場合バトンは舞台と平行にあるわけですが、
舞台と垂直に置かれたバトンのことを「東西バトン」と言います。
それから、最も頻繁に使われるサスペンションライトを吊るすバトンは「サスバトン」と呼ばれ、
複数ある場合は舞台面側から「1サス」「2サス」と呼びます。
また、バトンに吊る道具のことを「吊りもの」(吊物)と言い、
吊りものを吊るためのバトンは「吊りものバトン」、
さらに、人が通れる程太いバトンを「ブリッジ」と呼んだりします。
観劇したことのある方なら、舞台の上部に照明が吊られていたり、
舞台上部から大道具が降りてきたりするのを、見たことがない方はいないと思います。
つまり、バトンは舞台上で作品を演出するのに欠かせないと言っても過言ではないものであり、
非常に一般的なものであるからこそ、その使い方は演出家やスタッフの力量を問われるところでもあるのです。