バナナの叩き売り

「バナナの叩き売り」

巧みな口上や様々な芸を用い、とにかく人を集めて少しずつ値下げしたりしながらバナナを売りさばく。
そんな販売方法を「バナナの叩き売り」と言い、現在では大道芸として認知されています。

バナナの叩き売りは、いわゆる口上売り啖呵売)の一種なのですが、
がまの油売りなどと並んで、最も有名なものの一つに数えられると思います。
では、いったいどうして口上売りの商品にバナナが選ばれたのでしょう?

そもそも、バナナは日本では栽培されていない果物で、
初めて輸入されたのは1903年頃と言われています。
そして明治時代の後期になると、貿易港として発展した福岡県北九州市の門司へ
台湾から大量にバナナが輸入され始めたのですが、
当時はもちろん船便ですし、電気冷蔵庫もありません。
熟れてしまうと日持ちしないバナナは、
青いときに収穫して輸入し、室(むろ)で熟成させてから市場に出荷していたのですが、
どうしても傷んでしまうものや、余ってしまうものが出てきてしまいます。
こうしたバナナを早く捌いてしまうため、露天商に安く卸したことから生まれたのが「バナナの叩き売り」です。
商品価値がなくなる前に売りさばくには、口上売りが必要だったのでしょうね。

ですから、バナナの叩き売り発祥の地は北九州市の門司と言われており、
「門司港バナナの叩き売り保存会」が設立されている他、
門司区港町にある旅館・群芳閣の玄関脇には、
「バナナの叩き売り発祥の地」の記念碑が建てられています。

流通が整い、食品が露天商で売られることも少なくなった現在、
バナナの叩き売りは「魅せる」大道芸として僅かに残るばかり。
売られるバナナも、戦後しばらくはほとんどが台湾産でしたが、
現在は80%がフィリピンバナナで、台湾産は全体の3%程度。
まるで、叩き売り師が姿を消すのと同じように、
売り物の台湾バナナも姿を消していってしまったかのようですね。

「バナナの叩き売り」奥付

  • Posted : 2009年8月 9日 02:36
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