「馬鹿」(バカ)
大道具を作ったりしているときには、
「バカを取って」「バカで計って」というような会話が、当たり前のように繰り広げられています。
略して「おい、バカ!」なんて言われるとカチンとくるかもしれませんが、決してバカにされているわけではなく、
この場合の「バカ」とは、高さや長さを測る棒のことを指して使われている言葉です。
例えば、大道具で同じ長さの物をたくさん作る場合、
毎回メジャー(スケール)で測って作ると手間なので、
予め長さを測った棒を作っておき、その棒の長さに合わせて作る、という手順を踏みます。
このことを「バカを取る」と言い、できた棒のことを「馬鹿棒」「馬鹿定規」と言います。
これを略して、「バカ」と呼んでいるわけですね。
他にも、道具と道具の間隔を測るための「バカ」や、
トラックに道具を積み込むときの高さを測る「バカ」など、
同じ高さや長さの物を頻繁に使う場所には「バカ」が存在します。
バカの材料は、その辺にある物なら本当になんでもよく、
切ってしまうのがまずければ、印をつけて物差しのように使う方法もありますし、
意外と誰しもが、気づかずぬうちにバカを使っているのではないでしょうか。
この通称「バカ」は、元々建築業界の用語で、
「バカでも測れる」ということで名付けられたものだと思います。
が、それではちょっとあんまりな感じもしてしまいますので、
「測(はか)」が訛ったなど、別の語源である可能性も一応提示しておくとします。
しかし、ネジ山がダメになり、利かなくなることも「バカになる」と言いますよね。
基本的に、他人を罵るためにある「バカ」という言葉ですが、
けっこう色々な用途がある辺り、バカにできない言葉かもしれませんね。