「穴があく」「穴をあける」
様々な場面で使われる「穴をあける」という言葉。
一般的には「仕事でのミス」を指す意味での使い方が多いでしょうか。
「穴があくほど見つめる」という使い方もありますね。
芸能の世界でも、同じような使われ方をします。
舞台上のセリフや動きなどのミスは「とちり」、
舞台に出るタイミングを間違えることは「出とち」などなど、
ミスに対して色々な言い方があります。
これらも舞台進行上、許されるものではありませんが、
「穴をあける」ことは、芸の道を絶たたれる程の重罪となります。
チケットを買い、楽しみにしているお客様を裏切ることは、
芸能人にとって、決してあってはならない行為です。
そのために、たとえ高熱があろうと骨が折れていようと、
代役などの都合がついていない限り、芸人は舞台に立たねばなりません。
もちろん交通事故で到着できないなど、やむを得ない場合もありますが、
お客様を裏切れないという芸人根性から、
穴をあけまいとする芸人達の様々な伝説があります。
逆に、穴をあけてしまい芸能界を去った人も・・・
さて、この「穴をあける」ことを防ぐための面白い方法が、
寄席の世界にありました。
舞台上の噺家が、噺(ネタ)の途中で脱いだ羽織を舞台袖に投げる。
次の出番の人が楽屋に到着していてスタンバイが出来ていれば、
その羽織は片付けられ、もし居ない場合はそのままにしておくそうです。
つまり、羽織がそのままなら、もう一つネタをするなどして、
なんとか穴をあけないようにしなければならないのです。
分刻みで演者が変わる寄席ならではの方法ですよね。