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いつかを信じて
作 岡村浩司
主な登場人物
隆 田所隆 。30歳位
景子 田所景子。30歳位
サタン、伊藤清光。45歳位
母 田所由美。45歳 他界
父 田所新平。60歳
妹 田所由香里。
彼 保田保。(若かれし頃の保。俺の夢、冗談です)
声のみ出演
*高級マンション50階一室
*時刻、夜23時頃
*景子板付き
景子
スマホを見ている。
*音のみ
隆
元気?今何してる?俺は今、大阪の梅田にいる。商談うまくいきました。イエ〜イ。
お土産もって帰るね。待っててね。
景子
ブチ消去。
隆
おお、これからフレンチ食いに行こうぜ。景ちゃんの為に特上のワインをご馳走します。好きだよ。マ〜イ、ケイコ〜。
景子
アホ、ブチ、消去。
*今度はキャバクラの名刺を見る。
*声のみ
1
たかちゃん、今度またきてね。ラブ、ラブ、
*まっふたつに憎しみを込めて破りすて、ごみ箱に叩きつける。
2
今日はありがとう、凄く楽しかった。もう、たまにしかこないんだから、また、待ってるね。
*今度も憎しみを込めて手で握り潰し、拳を作り掲げ、ごみ箱に投げ捨て、足で踏みつぶす。
3
も〜、たかちゃんったら、あんまり、や〜よ。連絡まってる。
*最後、いったんはけ、電動カッターを持ってきて刻む。(仮り)
*そして、きりがない事にきずきバカバカしくなる。
景子
は〜(溜息)
*今度は昔の手紙(はがき)を見る。全て声のみ。
真理子
お兄ちゃんへ、この間沖縄に旅行に行きました。パンフレットなんかで見るより
すごくきれいで驚きました。仕事の事とか嫌な事がいっぺんに吹き飛んだよ。いつか、景子さんと、みんなで行きたいですね。それと、もうすぐお母さんの8回忌だよ。忘れないでね。いつも仕事が忙しいみたいだけど、体にはくれぐれも気を付けて下さい。これお土産。飲みすぎにはいいみたいですよ。真理子より。
*父の手紙
父
すまん、体の調子が悪いんだ。いつも申し訳ないが少し工面してくれないか?必ず返す。今度、金のいい仕事が見つかりそうなんだ。今度こそ大丈夫だ。頼む。
父であり、こんな事悪いと反省している。今度こそ立ち直ろうと思ってるんだ。すまん。
*またはがきに。
隆
いきなりで、ごめんね〜、ごめんね〜。この間、会社のみんなでハワイに行ったんだ。これお土産。景ちゃんがいなかったから寂しかったな〜?ハワイの夕日がとてもきれいで、それを見る度に景ちゃんを思い出します。ごめんね〜ごめんね〜。
*今度は離婚届をだす。
景子
・・・
*それを景子、破ろうとするもやめる。そして離婚届見比べる。
景子
・・・
*そこに隆、帰宅、登場。
隆
ただいま。
*景子、それを懐に隠し何事もなかったように、そして電気を暗くする。そして出迎える事なくただ座っている。
景子
お帰りなさい。(暗い、不愛想に)
隆
何だよ。電気もつけないで。(少しビビってる)
景子
電気代、・・・もったいないから。(嫌味を込めてあてつけに)
隆
ふーん、あっ、そう。まだ、起きてたんだ。
景子
起きてた?(傍白)悪い?(あてつけは、まだ、続く)
隆
いや。
景子
食事は?
隆
ああ、いらないよ。もう、寝るよ。(去ろうとする)
*景子 バンと机をたたく。
隆
何?(ビックリ)
*景子、隆に近寄り、隆びびり景子の顔を見ながら静かに下がる。そして一旦はける。
景子それを戻す。
景子
座れ、
隆
何?(まだ、座らない)
景子
お座り、
隆
はい。
景子
何、これ?(きゃばくらの名刺をだす。先ほどとは他の)
隆
・・・ハハハハハ、景子はわかってないな。、これを世間一般に・・・接待というんだよ。ハハハハ、お休み。
景子
待て。
隆
何。
景子
まだ、おわってないんだ。
隆
何だよ。
景子
あなた?このさいだからはっきりさせたいの?質問してもいい?
隆
いいよ。
景子
私はあなたの・・・主婦だよね?
隆
・・・だよね?
景子
私達、・・・夫婦だよね?
隆
・・・だよね?
景子
夫婦って・・・何?
隆
・・・。
景子
聞いてるんだよ。
隆
夫婦?・・・夫婦とは?景子はどう思ってるんだよ。
景子
夫婦とは、思いやり、助け合い、気遣いによる愛情?
隆
ハハハハハ、僕は理想の亭主じゃないか。
景子
何?
隆
何って?
景子
何って聞いてんだよ?何をもってして理想の亭主かって?
隆
そりゃ、一流企業、年収、車、そしてこの美貌。
景子
手前、そろそろぶっ飛ばすぞ。
隆
何が言いたいんだよ。じゃあ、きくけど、・・・景子は主婦としてどうなの?
景子
主婦たる事とは・・・炊事、洗濯、ごみ捨て、パート、家計簿、アイロン、常日々、節約。
隆
ワアーオ、お見事。パーフェクト。すばらしい。日本の国民の主婦、いや、世界中の主婦が君の味方だ。
景子
文句ある?
隆
ない。・・・主婦としてはね。・・・(隆も頑張り反撃に)でも、女性としてはどうだ?君の趣味は何だ?
景子
何?
隆
ああ、じゃあ、この際だからはっきり言おう。まず、このぬいぐるみだ。アンパンマンとかメロンパンとか、男にはどうも理解ができない。
景子
いいじゃない、かわいいじゃない。
隆
ふん、じゃあね後、部屋にあるポスターは何だ?ペヤングだかペテンジュだかしらないけど、
景子
ペヨンジュだ、バカ。
隆
どっちだっていいんだよ。旦那がいるのにあんなもん貼るな。
景子
後は?
隆
後は・・・今日のところはこれくらいで許してやる。じゃあな。
景子
待て、(怒って、犬を叱るように)これ(離婚届け)
隆
離婚届け?何だよ、いきなり。
景子
・・・・。
隆
何なんだよ?わけわかんない。訳ワカメ?
景子
・・・
隆
おいおい、勘弁してくれよ。俺だって仕事はパーフェクトだぜ。景子だって文句はないだろ。綺麗なマンション、車はベンツ、市民の憧れだぞ。そして国民のために多額の税金を納め愚痴一つこぼさない。こんな立派な奴がいるか?その男に離婚届け?世間の人はみな口を揃えて「君の選択は間違ってる」というに決まってるよ。 俺だって仕事の付き合いがあるんだよ。休みの日だってゴルフ。はっきり言えばキャバクラだって行きたくないんだよ。だけど世のスケベの寂しがり屋が行こうというから、接待なんだよ。この生活を維持するためにはしょうがないだろ。
景子
・・・わかったわ。
隆
あれ?さすが話がわかる。じゃあ、これは白紙だな。俺も生活を少しは改めるよ。今度、二人で旅行に行こう。そうだ、温泉がいいんじゃないか。温泉入ってゴルフでもやろう。景子の好きな所でいいぞ。
景子
・・・(不愛想)
隆
おい、機嫌直してくれよ。急にこんな物出されてビックリするよ。今度、もう一回ゆっくり話し合おう。なあ、じゃあ、悪いけど明日早いから、(去ろうとする)
景子
まだ。
隆
まだあるのか?
景子
今の隆君もそうだけど、・・・回りの事は?
隆
回り?回りって何だよ。
景子
家族は?
隆
また妹と親父の事か?真理子はもうすぐ30だぞ。自立しなくちゃ。
景子
月に一度位、食事でも誘って近況を聞いてあげなさいよ。
隆
わかったよ。また、今度な。でも親父には金を貸さないぞ。そんなものどぶに捨てるようなもんだよ。
景子
・・・
隆
その金がどこにいくかわかるか?パチンコ、競馬、酒。貧乏人が金持ちに寄付してるようなもんじゃないか。そんなバカな話があるか。何のために働いているんだ。
景子
・・・会って話しぐらい聞いてあげれば。(少し自信がなく弱気)
隆
ふん、何回も聞いたよ。もう無理だよ。かれこれ10年はたつよ。もう、見込みはないよ。
景子
・・・じゃあ、見捨てろって言うわけ。
隆
お前も相変わらず人がいいな。・・・じゃあ、どうしろって言うんだよ。
景子
・・・
隆
今までだって助けてきたじゃないか。
よく言われたよ母さんに、「お兄ちゃんでしょう」って、何て理不尽なお説教だ。いつも損するのは兄貴ばかり。頑張って稼げば稼ぐほど、何の苦労も汗をかかず、いともた易く自分の物のように役所は税金をもっていきやがって、親父は親父で「儲かってるからいいじゃねえかって」家に帰ればお前が妹の面倒を見ろと。世界を見てみろ、アメリカ、イギリス、フランス、先進国のお兄ちゃん達はこぞって金儲と戦争ばかりじゃないか。人助けなんて自ら戦争やっといて、国民の顔色伺いと自分の正義の建前上の大義名分だよ。彼らと同じ位の気持ちでやらないと俺達だっておいていかれるんだよ。お前だってこのマンションの夜景をいつも喜んで眺めているじゃないか。夏祭りには荒川、隅田、江戸川と、3か所からいっぺんに花火が上がる。一軒家や小さい団地やマンションに住んでる奴には見えない夜景なんだよ。成功者にしか見えない夜景なんだよ。
景子
はあー(溜息)、今となっては恥ずかしいわ(独り言、自分に呆れる)。世間の人が今の言葉をきいたら何ていうでしょうね。
隆
もう、いいよ。
景子
・・・私、今のままじゃ、あなたが心配なのよ。
隆
心配?何が?
景子
・・・きずいてないわ。
隆
何がさ?今は人生で絶好調じゃないか?心配なんて微塵も感じないよ。健康診断だって全て問題なし。あえて言うなら糖尿、血圧、血糖、贅沢病の自分の心配しているいくじなしの仲間が多いって事だな。
景子
・・・私には見えるの。成功の陰が、・・・犠牲者が。
*ヒューと風の音。
隆
・・・何、何言い出すんだよ、急に。そんなの俺の責任じゃないよ。(少しびびる)
*景子、窓辺により夜景に向かって
景子
そうね。あなたの成功は私の成功でもあるけど、あなたの失敗や不幸は私の責任でもあるの・・・(振り返り)見えるわ。あなたの後ろに・・・黒い影が、
隆
あああああ、何?
*景子、隆に静かにゆっくり近寄り
景子
ゴキブリだった。(潰して隆のポケットに入れる。潰した手を隆のスーツで拭く)
隆
ああ、汚いな、何するんだよ。
景子
あっ、
隆
何?
*音、コトン。
隆
いや、(景子にしがみつく)
景子
やめてよ。
隆
(咳払いをして自分を立て直す)
景子
写真が落ちただけよ。・・・いい笑顔ね。
隆
何だ、ボランティアの時の写真だな。・・・あの町はいつ立ち直るかな?
景子
そう信じてあなただって行ったんでしょう。
隆
ああ、そこでお前と出会って今ここにいる。愛や絆なんてよくいったもんだ。・・・善意にはいつも裏切られる。福島だって復興してないのに、それをおいて政府や世間はオリンピック招致で浮かれてる。アベノミクスでばら撒いた金が福島や困っている人にちゃんと届いたか?・・・長い物に巻かれた方が得なんだよ。要領という言葉を覚えろ。いい加減目をさませ。俺達はやるだけやったんだ。それすらやってない奴は五万といるんだ。俺達はまだましだ。何も恨らまれる事なんて何もない。
景子
・・・(暗い悲しい顔して下をむく感じ)
隆
そんな顔するな。もうすぐ大きい案件がおわれば、また、大金が手に入る。アベノミクス様様だよ。ハハハハ、
*いきなりカードを取り出す。
隆
おい、いきなりなんだよ。
景子
ねえ、一枚引いて。
隆
占いか?女は好きだなそういうの。あたりゃしないよ。人生は自力本願だよ。
景子
いいから引いて。
隆
はいよ。
景子
見て。
隆
うん。
景子
サタン?(そのカードを見ずに当てにかかる。もしかして?)
隆
正解、ってこれ手品か?
景子
正解?
隆
正解だよ。
景子
やだ。や〜、や〜。
隆
何だよ?
景子
違うわ。違うの。(少し予言があたって怖がっている)ちょっといい加減な私が・・・当てちゃったのよ。(私に力を入れて)
隆
自慢になってないよ。
景子
ああ、ああ、ああー、(悲しみにうなだれる)
隆
何だよ?
景子
あなた、太陽だって毎日沈むの。海だって引いたり満ちたりするのよ。自然の摂理の意味がわかる?あなたはその時期に突入してるのよ。
隆
何?そんな事言ったってどうすりゃいいんだよ?
景子
まず、・・・先祖供養にいきましょう。
隆
お前は細木和子か?
景子
でも、そういう事、全然やってないわよね。お母さんの墓参りにも行ってないわよね。あなたがあるのはご先祖様のお蔭なのよ。
隆
わかった、わかったよ。行くよ、行くよ。
景子
そして、
隆
まだ、あるのかよ?
景子
もう一枚引いて
隆
また?はいよ。
景子
見て。
隆
はい、あっ?
景子
何?
隆
真っ黒だ。
景子
あっ、それは・・・・・サタンの陰謀。
隆
サタンの陰毛?
景子
バカ、ふざけるな。私、・・・実家に帰らせて頂きます。(ビビっている)
隆
おい、待てよ、待てよ。お前さっき、俺の不幸は私の不幸なんてカッコイイ事いったじゃないか。
景子
誰がいったのそんな事?私覚えてない。わかった・・・サタンの仕業よ。(少し自分の世界に入っている)
隆
お前は頭がおかしくなったのか?さっきからサタン、サタンって何だよ?お前はサンタの親戚か?
*ここからのヘブライから、景子のセリフはまるで悪魔のように話す。隆にせまる。
景子
・・・サタンっていうのはね、・・・ヘブライ、アラム、ギリシャ、ラテン語。そして、ユダヤ、キリスト、イスラーマの・・・悪魔。かつては神に仕える御使いでありながら堕天使となり地獄の長になった悪魔。罪を犯して堕落する前のサタンは敬虔な御使いであったが、神に反逆して敵対者として・・・悪魔に変化した。、この黒が出るって事はね、これから闇の世界があなたを待ってるって事。
隆
えっ?・・・ふん、バカバカしい、こんなカードで人生が左右されてたまるものか?弱気になるな。人生は自分で切り開くんだよ。
(ビリッと破る)
景子
あっ、(すごく怖がる)
隆
びびってんじゃねえよ、こんなカード。どうせハンズかドンキーかなんかで買ったんだろう。
景子
それ・・・10年前に亡くなった占い師の手作りのカード。
隆
えっ?バカ野郎、滅茶苦茶ビビるじゃねえか。(拾い集め、カードに向かって)どうもすいません、どうもすいません。心から反省します。
景子
もう、遅いよ。
隆
えっ?
*そこに携帯に電話が、景子と隆、顔を見合わせる。
隆
「はい、もしもし、荒木ですけど、はい、はい、えっ?本当ですか?はい、はい、わかりました。すぐ行きます」
景子
どうしたの?
隆
ふん、来たよ。内の社長のサタンだよ。
景子
これから出かけるの?(呆れて)
隆
ああ、呼び出されたからね。
景子
どこ行くの?
隆
六本木。
景子
またキャバ?・・・いい加減にしてよ。(怒って)
隆
俺じゃねえよ。お前の大好きな内の顧客のサタンだよ。
景子
ふん、本当にそうかもね。どうなっても知らないよ。(嫌味と少し脅かしながら)
隆
ふん、くだらん、じゃあな。
2 外、路上。
*暗転 外、幕前。
隆、板付き。
*仮
隆
あ〜、疲れるね全く。あータクシー。何だよ。おーい、はあー。
*サタンの笑い声。フフフフ。そしてボールが転がってくる。
隆
何だ。・・・あ〜〜〜バン、事故に会う。
*事故
3 あの世の入り口
隆
ここはどこだ?(きょろきょろする隆)あれ?あれ?どこに行っても帰って来てしまう。
サタン
いらっしゃいませ。(彼のうしろから)
隆
ああー、(驚く)どうも。ちょっと道をおたずねしたいんですけど、・・・(顔をみて)やっぱりやめときます。
サタン
そうですか。
*隆、立ち去るも、また、戻って来てしまう。
隆
あれ、ああ、先ほどはどうも、さよなら。
サタン
お困りですか?
隆
ええ、道に迷って・・・出口がない。どこも暗闇でここに戻ってきてしまうんです。
サタン
そりゃあ、そうですよ。ここに出口はないんです。
隆
えっ?そんな・・・ここは?
サタン
ハハハ、ようこそ。そう、ここはあの世の入り口なんです。
隆
あの世の入り口?
サタン
そうです。
隆
ハハハ、お笑いだね。だからあんたは顔色悪いのか?ここはお化け屋敷か?どうでもいいけど・・・お前は誰だ?
サタン
俺か?フフフ、お前は俺を知ってるいる。俺もお前を知っている。
隆
知らないよ。お前みたいな化け物。
サタン
さっき、・・・カードを破ったじゃないか。
隆
えっ?
サタン
そう。私は、・・・サタンだ。
隆
そうは見えないな。何か売れない生き詰まった演歌歌手みたいな顔してるな。
サタン
何?
隆
それと・・・戦場ジャーナリストの渡辺洋一みたいなしゃべり方やめてくれないか?
サタン
・・・それはできない。
隆
本当にサタンなの?まいいや、勝手にしてくれ、じゃあな。
*うろうろするも出口がない。
*その光景にサタンは笑う。ハハハハ
隆
おい、どうなってるんだ?
サタン
お前は死にかけているんだよ。
隆
何言ってるんだ。この通り元気じゃないか。手も足もちゃんと動く。
サタン
さあ、あれをごらん。(どちらかを指さす)救急車で運ばれている人がいるだろ。
隆
あっ、俺だ。何で、何で、血だらけだ。
サタン
そう、死にそうなんだよ。
隆
そんなバカな。
サタン
さっきボールを拾おうとして交通事故にあったんだ。諦らめろ。
隆
そんな・・・おい、おい、どうなってるんだ。どうなっているんだ?なあ、頼むよ。何とかしてくれよ。おい、おい。お前、サタンだろ。何とか出来る力をもっているんだろう。なあ、なあ、(へっぴり 腰でサタンにすがりつく)
サタン
お前さっき、この私の事を・・・生き詰まった演歌歌手って言ったよな。
隆
いや、見方によってはキムタクにも見える。いや、そりゃ、ないな。(独り言)
サタン
ふん、
隆
そうだ、これ、お金。ことわざにもあるだろ、地獄の沙汰も金しだいって。少ないけど、足りなければもっとふりこむからよ。
サタン
・・・(軽く笑みを含み懐にいれる)
隆
あの世も話がわかるな。(隆も笑顔)これがお前の陰謀か。
サタン
こうしてくれる(懐からだし破る)俺をなめるな。あの世には金なんぞ必要ない。そして俺は何でも知ってるんだ。この金がどんな金か。・・・一つ、お前が工事の受注を巡って賄賂、接待、横領。ふた〜つ、その金で旨い物を食い散らかしキャバクラ三昧、闇ギャンブル。みっつ、おまけにその店長を抱き抱え、出来レースの大儲け。そして、その裏で自分の建設会社を作ろうたあ言語道断、傍若無人。
隆
お前は桃太郎侍か?桜吹雪でもだすのかね?そんなのみんなやってらあ。政治家や官僚はどうなるのかね。国の金を食い物にしてるじゃないか。
サタン
ふん、まあ座れ。疲れただろう、飲め。(赤いジュース)
隆
ありがとうよ。何だこれ・トマトジュースか?まず?何だこれ?
サタン
お前が普段飲んでる、人の世の血と汗のジュースだよ。
隆
うっ、オエッ。何をいうんだ。
サタン
お前の身勝手な利益主義の為に、安い賃金で過酷な労働や逆に仕事を貰えないで苦労してる人がどれだけいることか、考えた事はあるのか?
隆
・・・あるさ。(自信がない)
サタン
それに対してお前は何をした?
隆
現場の人に・・・10時にお茶を出した。(怖がりながらも自信満々に)
サタン
後は?
隆
後はー?3時に茶菓子をもってった。(ここでは自信満々)
サタン
お前は10時と3時しか人に貢献できないのか?
隆
・・・俺は営業だ、会社の為に十分仕事をとってきたよ。
サタン
汚い事をしてな。そして、それを、みな人にやらせたり、気に入らない奴は首にした。
隆
お前は何が言いたいんだ?
サタン
・・・・・死にたくないか?
隆
ああ、当然だよ。まだやりたい事は山ほどあるんだ。わかった。わかったよ。もっと、もっと、人に尽くそうと反省しますよ。もう、闇ギャンブルはやらないし、現場の人にも酒の一つもおごるよ。これでいいだろう、許してくれよ?(まるで反省の余地がない)
サタン
これからお前を審査する。題してフャイナル審査。
隆
フャイナル審査?何で俺がこんな目に?
サタン
お前は得を取りすぎた。人生とは、陰と陽。幸と不幸。光と影。そして損と得。シーソーのような微妙なバランスで成り立っているんだよ。お前のシーソーは・・・今、壊れかけているんだよ。
隆
そんなバカな。じゃあ生まれつきお金持ちはどうなるんだよ。悪い事やって逃げ切る奴はどうなるんだよ。
サタン
・・・ここで審査する。(嬉しそうに)
隆
何だ嬉しそうに。
サタン
嬉しいのさ。ハハハハ私の天職だ。では、始める。
隆
もう?
サタン
お前には答える権限がある。答えるにあたってチャンスヒントを受けられる。それに答える事によってお前の運命が決まる。
サタン
(合図)
*それを合図に大きなか雷が落ちる。
隆
ああ、(驚く)
サタン
座れ、・・・では行きます。
隆
わかったよ。(生唾を飲むような)俺はこう見えても大学でてるんだからな。
サタン
では、一問目・・・最近、東横電気が問題になっているが、・・・その原因は何だ?(この問題は仮)簡潔に答えよ。
隆
ハハハハハ、簡単だな。俺は新聞読んで、世情には敏感なんだよ。ふん、それは会計士の粉飾決算だろ。それで株が下がり株主に多大な迷惑をかけアメリカのどこどこの委員会が訴訟をおこしたってやつだろ。
サタン
・・・それでいいのか。
隆
ああ、自信満々だね。
サタン
・・・正解。
隆
おいおい、あんまりじらすなよ。心臓に悪いぜ。ここで心臓発作おこしたら審査の意味がなくなっちゃうよ。?
サタン
うるさい。では、二問目、・・・奥さん、景子さんの・・・誕生日は・・・何月何日だ?
隆
ハハハハハ、ハハハハハ、・・・あれ?出てこない。いつだっけ?ちょっと待って、ちょっと待って、(財布やら携帯を見るもわからない)
サタン
わからないのか?
隆
確か9月というのはわかっているんだよ。後が後が出てこない。
* チックチックと音がなる。
隆
待ってくれよ。
サタン
被告人には一応ヒントを受ける権限がある。ライフライン?
隆
何それ?
サタン
俺の携帯なら現世とつながる。現世とは時間軸が違う。お前が事故をおこした事は奥さんはまだ知らない。
隆
えっ?よし、かしてくれ。あーもしもし、俺だ。
景子
何処にいるの?
隆
あの世の入り口。
景子
あっ、そう、面白そうなキャバクラね、じゃあ。
隆
待て、待て、待て、待て、待てい。いいか大事な事なんだ。俺の運命がかかっているんだよ。いいか、俺の質問に素直に答えろ。時間がないんだ。景子、あのー誕生日・・・いつだっけ?(申し訳なさそうに)
景子
・・・・・死ね。
* ぶちと電話は切れる。
隆
バカ野郎、俺は今死にかけているだ。
*プっ、プっ、ブー。
サタン
・・・ブブー、はずれ。
隆
ああー、
サタン
では、
隆
おわり?
サタン
三問目。
隆
まだ、チャンスはあるんだな。よし。
サタン
これが最後だ。では、行きます。これも至って簡単です。お母さんの命日はいつ?
西暦で答えよ。
隆
えっ?えーと、えーと、俺が20の時だから今から何年前だ?16年、だから、だから、えーと、わかった1999年4月23日。
サタン
間違いないか?
隆
うん、うん、大丈夫だ。
サタン
では、・・・・・
*プっ、プっ、ブー
隆
えっ?
*後ろからおふくろが来て隆の頭を叩き、バン音
母
はずれだ、バカ。
隆
痛っ?
母
私が死んだのは1999年の4月の26日だ。3日ずれてる。
隆
おふくろ?・・・母さん?
母
お前は母親の顔も忘れたか?
隆
母さん、元気か?(信じられず戸惑いながら)
母
元気な訳ないだろ。もう、死んでるだよ。
サタン
そんなお母さん、・・・今日はわざわざ遠い天国から来ました。死に別れて16年、一日たりとも息子の顔を忘れた事はございません。会いたい、会いたい。ただ、その一言を胸に今日まで天国で見守ってまいりました。そして、今、とうとう夢が叶いました。さあ、時間の許す限り親子の再会。ご対面〜。(客席にむかって、マイクを掴み、まるで司会者のように悲しみをこめて)
隆
そういう番組なの?それより母さん、会いたかった。(母の手を大切に両手で取る)
母
本当かお前?全然、墓参りも来ないで毎日キャバクラばかりいって、妹の面倒も見ないで本当に、みんな知ってるのよ。
隆
悪かったよ。
母
本当に、このバカ息子。
*二人は久しぶりの再会を改めて確かめ抱き付く。
隆
母さん。
*その光景にサタン少し涙。白いハンカチで上品にさり気なく拭く。その自分の弱い姿を
見られたくない)
母
お前は、まだまだ子供だね。
隆
母さんはあれ以来、変わってないな。・・・どうして・・・あんなに早くいってしまったんだ?
*サタン静かに退場。ハンカチでまだ、上品に拭きながら。二人だけの時間にする為に。
母
・・・定めだよ。お前にはまだわからないだろうね。・・・それより真理子とうまくやっているの?
隆
うーん・・・
母
みんな知ってるよ。社会からすれば真理子は決して出来る子ではない。だけど、人として真理子はしっかり成長してるわ。・・・あんたの事が好きなんだよ。彼氏の事や仕事の事、日常を話したいんだよ。父さんが、ああなってしまったから、身内はあんたしか頼りになる人がいないんだよ。・・・わかる?
隆
彼氏ができたのか?
母
ああ、見てごらん、真理子の日常を(合図)
隆
あっ、真理子。
*二人は画面を見ているような演技
1(女)ここは、前にもいったでしょ。お客様の声をきいてそれから私に相談してから判・断すると、何勝手にやってるの?
真理子
はい、すいません。
1
もう、何回目?あなただって、もう、いい歳なんだからその位、理解しないと。
真理子
はい。
1
後、これも前にいったじゃない。
真理子
以前、言われた通りやったんですけど、
1
状況に応じてやっていったでしょ。バカの一つ覚えみたいに同じ事やってもしょうがないの。ちっ、(舌打ち)わからないかなー?疲れるわー。(独り言だが少々あてつけに聞こえるように)
隆
何だ、あのクソババア。
*頭を軽くこずく。母。
*場面変わり。
彼
お疲れ様。
隆
おっ、彼か?
真理子
お疲れ。
彼
仕事疲れたね。今日どうだった?
真理子
また、怒られちゃった。
彼
大丈夫だよ。少しずつやればいいさ。僕も怒られたよ。伝票整理が間違ってたんだ。「お前は何回いえばわかるんだ」って、
真理子
私も、
彼
子供の頃からよく言われたよ。お前は要領が悪いって。何をやっても駄目なんだ。だけど、一つ得意な事がある。・・・パズルが好きなんだ。難しければ難しいほど面白い。パズルの世界には要領なんて通用しないんだ。ひたむきな姿勢と根気が必要なんだ。・・・僕はそういう世界が好きだな。だけど、それも家では邪魔扱い。
真理子
何かいい仕事見つかるといいね。
彼
もう、転職も何回しただろう?中々みつからないね。
真理子
・・・心休まる場所って、この世にあるのかな?
彼
・・・僕が作るよ。
真理子
うん。
彼
お腹すいたね。何か食べよう。僕がおごるよ。
真理子
ありがとう。・・・私だすわ。
彼
いいよ。僕が出すって、
真理子
いい、私だす。
隆
僕が出す。(半べそで財布からお札を出す)
彼
じゃあ、割り勘で。
母
見てな。エイッ。(隆のお金をとり懐に入れ真理子、彼に向かって指で合図)
彼
あっ、お金が落ちてる。
真理子
あっ、本当、警察に届けなきゃ。
隆
隠せ、すぐ懐に入れろ。警察なんかに届けるな。
彼
そうだね、落とした人が困ってるもんね。
母
身元知らずで返ってくるよ。
彼
交番に行こう。もうすぐ給料入るんだ。何かプレゼントするよ。
真理子
そんな、いいわ。私も、お給料入るし。私こそプレゼントする。
彼
いいよ。
真理子
いいわ。
彼
そういえば、お兄さん、
真理子
もうすぐ誕生日、。
彼
一緒に誕生日、お祝いしよう。
真理子
・・・(悲しげな様子)
彼
きっと、よくなるよ。
真理子
そうよね。
*隆、この会話に唖然とする。
彼
来週、また、お見舞いに行こう。
真理子
うん。
彼
お腹すいたね。今日何食べる?
真理子
そうだな〜、パスタ。
彼
いいね。
*画面消える。
隆
俺が事故を起こした事を知っているのか?
母
ええ。
隆
見舞いにも来てるのか?
母
ええ。
隆
どういう事だ?
母
さあ、見てごらん、自分の姿だよ。もう、三日たっているんだよ。
隆
えっ?管だらけの寝たきりじゃねえか。
母
ここは現世とは時間軸が違うのよ。現世よりうんと早いのよ。
隆
・・・母さん、俺は今、絶好調なんだ。もうすぐ大金が入るのを目の前にしてこのまま終わる訳にはいかない。みんな会社の人も俺を信頼してるし俺を必要としているんだ。
母
本当にそうかな?
隆
勿論さ、
*指で合図
*声のみ。
高田
いやー、人生とはわからないもんだね。言っちゃー悪いけど、このまま・・・いってくれねえかなー、何ていったら罰が当たっちゃうかな。
隆
あれ?高田。
高田
あいつの自慢話と説教がうざいんだよ。ちょっと成績がいいからってよ。それは会社の看板のお蔭だっていうの。わかってねんだよな。内の会社の看板があればだれだって営業とれんだっていうの。よし、俺にも運が巡って来た。あの人の顧客は俺が引き継ごう。生きて帰ってくれば、「自分がしっかり隆さん為に守ってきました」っていえばいいんだ。死ねばそのまま頂きだ。
これはでかい山だな。5000千万の5%で、それが8件。うーん、ハハハ、悪くないな。
裕子登場。
優子
何、ブツブツ言ってるの?
隆
あっ、裕子。
高田
さあ、飲もうぜ、隆さんに乾杯だ。
優子
何もう、最近、全然お店に来てくれないじゃない。
高田
そういうなよ。さあ、(乾杯の仕草)
優子
何に乾杯なの?
高田
そりゃ勿論、わかってるだろ?
裕子
悪い人ね。まあ、しょうがないか。そりゃねー?だってあの人しつこいだもん。お金の自慢ばかりして、その癖せこい。ああいうお客が一番サイテー。その点ユー君は太っ腹、器が違うは。
高田
あいつにはこき使われたもの。俺のとった客もみんな自分の手柄にしやがって、ああ、ムカつくわ。でも、あの分じゃ、もう無理だな。見舞いにいったけど助からねえ。全身、管だらけだったよ。後は神のみぞ知るのみだ。
優子
やだー、そういう話、もう、やめよう。飲もう、飲もう。
高田
歌でも歌うか。乾杯、今、君は人生の大きな、大きな舞台に立ち、遥かなる、君に幸せあれ〜?
二人
ハハハハハ、
*高田、裕子、消える。
隆
あいつら・・・、何が乾杯だバカ野郎。散々、面倒見てやったのに。こんなにも人の本心とは違うものかね。でも、大丈夫だ。社長はそうは思ってない。俺だけに高級寿司屋の小部屋で内緒で話してくれたんだ。将来は君に部長の席を譲る事も考えているって。
母
どうだろう?(指で合図)
*社長声のみ
社長
参ったねー。荒木君があの若さでなー。
秘書
まだ、亡くなった訳ではないんですよ。
隆
ありゃ、秘書の木村じゃねえか?ちゃっかり出来てたのか?あいつは旦那もいるんだぜ?
社長
うん、だけど無理だな。復帰はできない。
秘書
残念ですね。成績優秀な方なのに。
社長
甘やかしちゃいけないよ。代わりはいくらでもいる。
隆
何?(かなり驚く)
秘書
将来は部長の席も考えてるっておっしゃってましたのに。
社長
ハハハ、君も甘いな。そんな事候補者みんなに言うんだよ。「誰にもいっちゃいけないよ」って言ってね。そうすると自分が特別扱いをされていると思ってその気になってくれるんだよ。あいつは特に単純だからね。まあ、あいつに限らずみんな目の前に人参ぶら下げて競争心煽れば、競走馬のごとく走ってくれるよ。走らない奴はそれはそれで隅においやればいいんだ。
秘書
彼どうするんですか?
社長
亡くなればそれまでよ。復帰したら伝票係りでも何でもいいよ。まあー、彼の運も尽きたかな。会社の為にはよくやってくれたよ。さあ、行こう。
隆
くそー、この糖尿デブ。やっぱりこいつらもできたのか。母さん、母さんの力でこいつら殺してくれよ。
母
そんな事できないわ。あんたも同罪よ。裏で自分の会社を作ってお客さんを自分の会社に流そうと考えていたんでしょう。
隆
だって、見たかい?あんな社長だもの。俺が首きられてもやっていけるように手ぬかりなく考えていたんだ。お前みたいな、糞社長より俺のほうが上手だよ。二股は決定だな。
母
生きて帰れればね。
隆
そんな事言わないでくれよ。こんな世の中だぜ。誰も信用なんてできないよ。毎日、競争、競争のなかで、みんな人や会社を押しのけ自分の事しか考えてない。俺だってこの通り使い物にならなければ、「はい、ごみ箱」、俺だって必死なんだよ。現に母さんだって父さんには愛想つかしていただろう? 今の父さん見てみろよ。俺に金ばかりせびって。
母
・・・
*母、指で合図
*父さん、競馬中継が聞こえる。(声のみ)
父
よし、よし。行け、させ、ほら、行け、ああ、ああ、ああ、あー、また、はずれちゃったよ。はあーしょうがねえな。おお、ママ、もう、一杯。
おかみ
つけ払ってからね。
父
払うよ、払うよ。よーし、もう一丁。
おかみ
やめときなさい。
父
大丈夫だよ。俺には金持ちの息子がいるんだよ。悲しい顔していけば奥さんが貸してくれるんだ。
隆
ほら、見ろ。何て奴だ。だから景子には言ったんだ。あんな金はどぶにすてるようなもんだって。
おかみ
ひどい事いうもんじゃないわよ。かわいい息子でしょう。奥さん天国で泣いてるわよ。
父
ふん、あいつの顔なんてもう忘れたよ。バカ野郎。
母
父さんとはね、中学生の時出会って、一緒になったのよ。若い頃は父さん二枚目でもてたんだから。でもね、農家を継ぐのが嫌だって言って、秋田から二人でカバン一つ、駆け落ち同然で東京に出てきたのよ。
隆
ふん、(父さんのいい話など聞きたくない気持ち)
母
それから、アパート借りて小さい町工場でコツコツ働いてまじめにやってた。そしてお前達二人が生まれた。それでだけで十分幸せだった。だけど、仕事がうまくいかなくなったのよ。社長が遊び人で会社が倒産。お金が窮屈になって、つい、焦って。その時、悪い証券会社の話しにのってしまって騙されて、一生懸命、貯めた1千万がなくなって。家族の為にした失敗を私が責めたのよ。それから喧嘩ばかり、生活も苦しくなって私が病気なった。
隆
父さんが悪いんだよ。そんな事引きずって。
母
父さんは寂しんだよ。生きる望みも失って。責めた私がいけなかった。父さんをもっと支えるべきだった。・・・隆・・・父さんを許してやって。(切に願う)
隆
母さん、人が良すぎるよ。父さんはいまだに反省なんかしてないじゃないか。・・・母さんの気持ちなんて、あの人には全く通じないよ。
母
これ、・・・父さんに渡して?
隆
何?これ。それにしても汚いな。
母
一緒に駆け落ちして田舎から出てきた時の鞄よ。これに私の荷物とお父さんの荷物と一緒に夢と希望を膨らませて汽車に乗った。汽車では不安がる私の手を握ってね。(後半は嬉しそうに、懐かしい父とのすばらしい思い出)
*指で合図
*若かれし頃の二人。汽車の中。汽車の音。フェードイン、
父
とうとう、ここまで来たな。
母
東京は初めてだー
父
怖えか?
母
・・・ううん、(しかし、不安)
父
おらあ、大丈夫だ。おらー全然こわかねー、興奮してたまらねえ。心配するな。俺が必ず幸せにしたる。俺がまじめに働いてよー、お前を絶対に幸せにしたる。おい、見ろ。・・富士山だべー。
母
どこ?
父
ほら、あそこ、
母
わあー。でっけえなー、
父
ああ、綺麗だべー。おらあ、初めて見る。
母
私もだー。
父
・・・きっとうまくいくべー、きっと。なあ、(熱い眼差し)
母
うん。(強く)
*二人、熱く手を握る。
*母、目を伏せ、画面競馬に戻る。
父
あー、また、外した。ちっ、もう一杯くれよ。バカ野郎、くそー、どいつもこいつも、ふん、
*画面消える
母
・・・お父さんのあの時の目忘れないわ。お父さんならきっとわかる。あの人もきっと立ち直る日が必ず来ると信じてる。(切の力を込めて言うも、そこには少し自信がない)
隆
・・・(目を伏せる。やりきれない気持ち)
母
隆、・・・隆はそれを信じないで、・・・一体何を信じるの?
隆
・・・そんな思い、・・・いつも裏切られるばかりだよ。(ますますやりきれない)
母
そうやって、あんたは腐る訳。
隆
腐ってなんかいないさ。それこそ母さんの死を見て、こうやっていってるんだよ。
結局まじめにやってる奴がバカを見るだけじゃないか。
母
バカって誰が言ったの?
隆
・・・
母
バカって誰が言ったの?(二回目は強く)
隆
・・・
母
世間はそうは見るかもしれないけど、私がそんな事、一度でも言った?父さんやお前達の為に損をしたと一度でも嘆いた事あった?
隆
・・・
母
私が損をしても父さんやお前や真理子が幸せならば、そんな事、痛くも痒くもないわ。それこそあなた達だけじゃない。他の人みんな、他人も罪を犯した人も生まれながらにハンディキャップ背負ってる人もみんなよ。
隆
・・・・
母
いい?損得が人生じゃないのよ。それを抜きにすれば焦る必要なんてどこにもない。必要以上に追わなきゃいいの。それは損じゃないわ。他の人が得をするんだもん。それは立派な行徳よ。
隆
・・・
母
子供の頃、覚えてる?近所の子がアイスクリームが買えないって泣いてだだこねてる所へお前がなけなしのこずかいを上げた事。友達が不良にからまれて、助けに行って一緒に殴られて顔に痣つくって私に転んだといって隠した事。好きな女の子がいたけど、遠慮して友達に思いを譲った事。小学、中学と野球やってる頃チームの為に必死に走ったあのグラウンド。・・・ほら、あの時のお前はどうした?どこに行った。野球の大好きなお前は?最近は野球観戦してるの?
隆
・・・(そう言えば行ってないな)
母
母さんねえ、
隆
えっ?
母
・・・うっ(苦し気に胸を抑える)
隆
母さん、どうしたの?
母
もう、行かなきゃ。少し話過ぎた。ここの世界では長くは生きられない。
隆
まだ、会ったばかりじゃないか。
母
あんたとはいつでも会えるから、
隆
母さん、・・・ずっと、一緒にいてくれよ。傍にいてくれよ。また母さんのカレーが食べたい。あの子供も頃に帰りたい。仕事の事もお金の事も、あの何も考えなかったあの頃に帰りたい。(甘える)
母
母さんにはいつでも会えるから。
*母すーっと消える。
隆
ああ、母さん、待って、待って。
*一人取り残される隆。
隆
うっ、うっ、(うなだれる)
*そこにサタン登場
サタン
母さんとの再会はどうだった?
隆
ふん、また、お前か。
サタン
ふん、弱音を吐きおって。私も、もう一度、・・・現世に戻ってやり直したい。
隆
あんたも昔は人として生きてたのか?
サタン
ああ、勿論。バリバリの社会人だったよ。私はね、・・・医者だったんだ。(自慢げに、うれしそうに)
隆
とても見えないな。どちらかと言えば、病院によくいる地味な清掃員にしか見え
ないな。(嫌味で)
サタン
うるさいんだよ。こう見えても私はね東大病院のブラックジャックって呼ばれてた。まさに神の使いだったよ。
隆
へっ・・・(若干のあきれ顔)
サタン
心臓の外科医でな。沢山の人命を救ったよ。緊急で運ばれて来た人。元々心臓が悪い人。時には失敗もし、悲しみに陥りヤケ酒をあおった事も何度あった事か。でも、そんな日々も人と言うもんはそれに慣れてしまう。だんだん年を重ね、金の力を覚え権力の力を知った。そしてお前と同じ、奥さんを放って、高級車にのり女遊びをし、何人も愛人を作った。
隆
まさに神の役目を裏切ってサタンに成り下がって訳か。
サタン
ああ、そして、酒がやめられず、とうとうアル中になった。・・・手術中、・・・手が震えるんだよ。そして、ちょっとメスで切りすぎちゃたり、縫合がずれちゃったり、まるで話にならない。その時思ったよ。ああ・・・私はおわったなって。それでも職を失うのが怖くて仕事を続けてた。しかし、・・・やってしまった、手術が失敗、・・・何名かの命を落としてしまった。(悲しげに)
隆
はー(溜息)
サタン
そしてアル中がばれた。そして病院を首になり・・・食うに困って悪い奴らの誘いで闇医者になりさがった。やくざの刺された奴とかシャブ中なんかを相手にね。でも、金回りはよかった。しかし、しまいには自分も薬に手をだして、・・・今度はヤク中になった。(なぜか?自慢げに、悪が悪をいきがるように)
隆
お前はよく中毒になるな。
サタン
人間は快楽の中毒になりやすい。(まるで他人事)
隆
アホな事を自慢げに言うな。
サタン
そして私はシャブを打ちまくった。悲しみから逃れるようにね。それは逃れるのではなく、地獄の特急券だったよ。でも、そんな俺を助けてくれた人が大勢いた。俺はあの人たちに何もできなかった。いつも自分の事ばかり考え、ただ、欲望だらけの人生で、・・・そして私は・・・自殺したんだ。終わったよ。もっと大事な事が人生には沢山あった。それを見失って快楽と報酬ばかりを追いかけて。今、ここにきてわかったよ。もう、遅い。
隆
・・・
サタン
お前の苦労は知ってるよ。でも、その不安や悦びを心から手助けしてくれる人がお前にはいるだろ?
隆
・・・あいつは説教ばかりだよ。(あいつとは景子)
サタン
見てごらん。
*指で合図
サタン
ベットの横で寄り添ってるのは誰だかわかるか?
隆
・・・景子。
サタン
お前はもう、一週間も寝ているんだよ。
隆
一週間?
サタン
ああ、ここは現世と違って時間軸が早いんだ。どんどん過ぎて行く。景子さんは一週間ずっとお前の看病をしているんだ。
*画面消える。画面からサタンに視線を移し、
隆
おい、・・・俺を現世に帰してくれ。
サタン
・・・
隆
おい、
サタン
・・・
隆
おい、何とか言えよ。
サタン
それは俺が決める事ではない。神が決める事だ。(そう言って懐から封筒を出す)
審査の結果だ。・・・自分で見ろ。
*紙を渡す
隆
何も書いてない。白紙だ。
サタン
フフフ、まだ、神様もギリギリに決めかねているな。
隆
どういう事だ?
サタン
こういう事だ。
*指で合図
*隆が心臓マッサージを受けている。
隆
あっ、
*声のみ
1
早く、心肺蘇生を、
2
はい、
ぴっ、ぴっ、ぴっ、
1
もう一回。
2
はい、
ぴっ、ぴっ、ぴっ、
1
もっと、力をいれろ。
2
はい、
だんだん遅くなる。
2
先生、
1
続けろ。
2
はい、
*更に遅くなる。
隆
待っくれ、待ってくれ。なあ、頼む。何とかならないのか?俺は、俺はまだ死にたくない。このままは終わる訳にはいかない。頼む、頼む、景子に会いたい、真理子に会いたい。
*画面消える。
*隆を冷徹に眺めるサタン。
サタン
よし、わかった。・・・白紙には特例を出せる。
隆
本当か?
サタン
但し、条件がある。
隆
何だ?
サタン
お前の大切な物、・・・それは全て取り上げる。それでもいいのか?
隆
えっ?
サタン
いいのか、聞いているんだ、答えろ?(迷ってる隆にあてつけの念押し。)
隆
・・・ああ、構わないよ。だけど、・・・景子と真理子だけは頼む。・・・二人だけは幸せにしてくれ。
サタン
ふん、よく言ったな。心配するな、それは約束する。
隆
ああ、
サタン
今から10秒やる。お前の大切なものを全て頭に思い浮かべてみろ。それを全て取り上げる。いいな。行くぞ。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10。それまでだ。(構わず)
隆
はあ〜、(溜息)ああ、考えたよ。さあ、帰してくれ。
サタン
・・・お前、約束を破ったな。(仮、隆を一瞬軽蔑の目で見てから後ろに向き歩いてセリフを言う。嘘をついた隆の顔を見れない、サタンは失望)
隆
えっ?(動揺、ばれた)
サタン
(振り向き戻りながら迫る。覇気をもって)
俺をはぐらかしたな。貴様は大切な物の反対を考えた。つまりどうでもいい物を頭に思い浮かべた。・・・頭はいいがそれをすぐに私利私欲に使う。現世の俗人がよくやる事だ。
隆
そんな事考えてない。
サタン
お前、俺を誰だと思ってるんだ?・・・サタンだぞ。
ダースベイダーのように手をかざし隆の心を読み取る。
隆
・・・ああ、ああ、(生唾ごっくん。へっぴり腰に座り、体が動かない。恐怖になる)
サタン
どうでもいい社長が病気になる事を思い浮かべ、ムカつく部下の不幸を思い浮かべ、その他諸々奥さんのぬいぐるみやらいらねえ物ばかりを思い浮かべた。・・・お前を憐れんで助けてやろうとしたのに。(首を横に振る。やりきれない)サタンを騙すとは・・・お前に限らず、人間たあーー愚か者よ。ハハハハ、それもよかろう。(隆に冷ややかな目をして、剣をとり、)
隆
あっ、あっ、
サタン
己の愚かさをしるがいい。・・・エイ(隆を斬る)
隆
あっ、あー、
暗転
*病室の声
*ピッ、ピッ、ピッ、ピーーーー鳴りっぱなし、
看護師
脈拍0、
医師
行くぞ、心肺蘇生機の電圧を上げろ。
看護師
はい、
医師
急げ、
看護師
はい、
*ボン、ボン、
医師
もう一回、
*サタン笑い声のみ、ハハハハ、ハハハハ
*フェードアウト
*ベットで寝てる隆。うなされて景子と呼んでいる。
*景子、隆を諭すような演技。病人で一年間眠っていた為、あまりショックにならないように。
隆
あっ、景子、景子。
景子
(仮、手を握る)
隆
あっ、景子。
景子
・・・やっと目が覚めたわね。
隆
景子、・・・ここは?
景子
病院よ。
隆
病院?
景子
そう、やっと起きたのね。・・・長い夢を見てたのよ。
隆
夢?
*隆の汗を拭く景子
*ふと、そばにあった小さいカレンダーを見て起きる。少し痛みながら。
隆
うん、う〜今日は何月何日だ。
景子
9月3日よ。
隆
そうじゃない。この2022年って何だ?
景子
そう、2022年の9月3日よ。
隆
何?と、言う事は?
景子
そう、長い休暇をとったのよ。働き過ぎたせいかもね。
隆
・・・半年か・・・あれから半年たっているのか?ああ、ああ、そうだ、車やマンションはどうした?
景子
ちゃんとあるわよ。
隆
仕事はどうした?
景子
あれからいろいろあってね。社長が糖尿病で入院してるわ。
隆
えっ?
景子
結構、重いみたいで復帰は難しいんじゃないかって。後、後輩の高田君が横領で捕まったわ。
隆
何?・・・俺のせいか?(現実の重さにびびり少し反省気味)
景子
何?
隆
何でもない。退院したら・・・二人の見舞いに行こう。高田を何とか助けよう。社長とも新人の頃のような気持ちで会いに行こう。
景子
えっ?
隆
後、・・・何かなくなった物はあるか?
景子
えっ?何で?
隆
って、言うか?半年も眠っていたんだ。いろいろ気になるだろ?
景子
そう、・・・私のお気に入りの物がなくなったり壊れたりしたわ。ぬいぐるみとか、顔面マッサージ機とか、ペヨンジュのサイン入りポスターとか、
隆
そうか。(まじめに神妙な顔でこたえる)また、買えばいいさ。ハハハハ。恐そるべし(傍白)
景子
何?
隆
いや、後、・・・そうだ、父さんどうした?(ここは深刻に)
景子
(暗い顔して首を横にふり)
隆
何?何も俺は死んでくれなんて思っちゃないよ。
景子
生きてるわよ。
隆
何だよ、そんな暗い顔して首を横にふるから。俺が殺したと思うじゃないか。
景子
えっ?
隆
いいや、いいんだ。・・・父さんは俺の事知ってるのか?
景子
うん。
隆
見舞いには・・・?(心配、悲しげ)
景子
・・・(首を横にふる)
隆
そうか。(失望)
*暗い顔をする隆。それを察し、
景子
ああ、それと妹さんがいろいろ世話してくれたのよ。
隆
真理子。おお、俺のかわいい妹よ、元気か?
景子
ええ、いつも彼と一緒にお見舞い来てたのよ。真理子ちゃん・・・お兄さんが退院した暁には・・・結婚するって。
隆
おお、あの彼氏か?
景子
知ってるの?(驚き)
隆
いや、いや、知らない、知らない、会った事も見た事もない。でも、きっといい彼氏に決まってるよ。真理子の事だもん、落ちてるお金を交番に届けるような。決して隠して懐に入れるような奴じゃない事は確かだよ。俺にはわかる。
景子
・・・はっ?
隆
何でもないよ。
景子
それと下着やら、タオルやらいつも真理子ちゃんが持って来てくれたのよ。
鞄をだす。
隆
あっ、?この鞄。(それを眺める)どうしたの?
景子
真理子ちゃんが持って来てのよ。きっと実家にあった物じゃないの。
隆
・・・真理子の結婚式には・・・父さんも呼ぼう。そうだ、その事を母さんに連絡しよう。墓参りに行こう。
景子
・・・そうね。
隆
そうだ、社長のお見舞いも行こう。高田の面会にも行こう。
景子
・・・ええ?
隆
景子、・・・俺は不思議な夢を見たんだ。おふくろとも会ったし、いろんな人の腹の底も見た。だけど、今、言える事は、・・・生きててよかった。また、一からやり直そうと思うんだ。それには・・・景子、・・・お前が俺には必要だ。・・・看病ありがとう。毎日来てた事は俺は知ってるぞ。夢で見たんだ。・・・これからもいつも傍にいてくれ。・・・頼む。
*ここは二人の以心伝心。意気投合。二人は抱き合う。初めて会った頃の初心に帰ったような気持。
景子
一時はもう、駄目かと思ったわ。ずーと危篤だったんだからね。
隆
退院したら・・・一緒に旅行に行こう。二人きりで、・・・もうすぐ誕生日だろ。
景子
覚えてたの?
隆
あたり前じゃないか。
景子
電話で教えてくれなんて言ってたくせに。
隆
ハハハ、
景子
旅行じゃなくて、野球に行こう。
隆
えっ?野球?何で?
景子
そのうちグローブとバットが必要になるかもね?
隆
えっ?
*景子、お腹を軽く摩り。
景子
野球好きになるといいわね
隆
えっ?何?本当か?
景子
うん。
隆
やったー、やったー。
*二人抱き合う
*そこに医者登場(サタン)
*二人照れ、すぐに離れる。
医者
私も行きたいな、野球観戦に。
隆
ああ、(かなりびっくり)
医者
やっとお目覚めかな?
隆
サタンそっくりだ。
景子
あんた何て事いうの。
隆
いや、カードに出てきたサタンにそっくりだ。その人はある中でポン中で手術すると手が震えるんだ。藪医者なんだよ。腕を見せてくれ。
医者
何だね?
隆
ああ、やっぱり、注射の後が、あれは夢じゃなかったんだ。
医者
何て事言うんだ。これは私が自分で血液検査の練習をした後なんだよ。私はこの東大病院を愛し、
隆
東大病院?(かなり驚く)
医者
医者という仕事に誇りをもち全生命をかけているんだ。失礼な事を言うな、全く。
隆
・・・
景子
先生がずっと担当だったのよ。
隆
何?(驚く)
医者
うん、もう、すっかりよくなったよ。私は必ず治ると確信してた。隆くん、この傷口も・・・私が縫合したんだ。(自慢げに)
隆
えっ?(驚き腹を見る)あっ、ずれてる。
医者
ちょっと位、ずれたって問題はないよ。ハハッハ。
隆
何か、酒臭いな。
医者
何を言ってるんだね。昨日飲み過ぎただけだよ。
景子
あんんた、先生、いろいろとありがとうございます。
医者
いやいや、隆君よかったね。景子さんには感謝しなくちゃいけないよ。まあ、正直を言うと、私も、一時はもう、駄目かな〜〜なんてちょっと思ってたんだよね〜(少しうれしそうに独り言のように)だけど彼女が「いつか立ち直ります」って信じて疑わないんだよ。それじゃあ、私だって諦めるわけいかないよ。酒も少し量をへらしたよ。まあ、そんな、こんなで今があるんだ。めでたし、めでたし、ハハハハ。
隆
いい加減な、やっぱり。
医者
それじゃあ、私は忙しい。次の縫合が待っているからね。じゃあ。忙しいのは素晴らしい、生きているとは素晴らしい、ハハハ。
*医者退場
隆
縫合がんばれよ。しかしあの笑い方、どうも、怪しい?あいつは夢に出てきたサタンそっくりだ。
景子
悪い夢を見たのね。
隆
いや、悪い夢ではなかったよ。・・・俺には必要だった。
*鞄を眺める隆。
*景子、隆に寄り添う。
*後ろの窓にサタンと母が覗いてる。
母
二人幸せにね。いつで見守っているわよ。
サタン
よかったな。悪さしたらいつでも迎えに行くぜ、へへへへ。
*振り向く隆。
隆
あー、やっぱり
景子
えー、
隆
サタンだ。
*ここからエンディング曲。
景子
何も見えないわよ。
隆
サタンだ。サタンだ。母さん。
景子
えっ?何を言ってるの。はー、退院はまだ、とうぶん無理そうね。
隆
あああああああ、あっち行け、あっち行け、
終わり
シアターリーグ
>
シナリオ
>
いつかを信じて
>