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2010年12月 1日
書店の仕組み
水嶋ヒロが齋藤智の名前で書いた小説「KAGEROU」が、ポプラ社から12月15日に発売されることが決まりましたが、
取次から書店には、返本を認めない買い取り制で配本されると報じられています。
まず、買い取りとは何ぞやということで、本の流通について簡単にまとめてみると・・・
書籍は出版社から取次と呼ばれる卸を経て書店に配本されます。
たいていの場合、取次はパターン配本と呼ばれる仕組みで、勝手に書籍を選んで新刊本などを持ってきてくれるので、
書店はそれを販売し、売れ残った本は返本することができます。いわゆる委託販売ですね。
ちなみに書店のマージンは20〜25%ほど。
小売店としては低い粗利だと言えそうですが、
返本できる=不良在庫を抱えるリスクがないと考えると、悪くない商売という感じもします。
しかしもう一つ、返本不可、書店が本を買い取る「買い取り」や「買い切り」と呼ばれる方法があります。
(「買切」と表記するのが適切な感じがするので、以下「買切」と書きます。)
例えば、私が書店に行ってある本を取り寄せてもらうと、その本は書店が買切で入荷するわけです。
また一般の配本でも、岩波書店の本はすべて買切制になっていますし、
書店が独自に取次に発注すると、買切の形になったりします。
今回、齋藤智の「KAGEROU」が、この買切で販売されるそうなのですが、
出版するポプラ社は、最初が肝心、最初に売れるだけ売る本だ、と見なしているわけですね。
当たり前の話ですが、買切は売れ残ると在庫を抱えるのは書店になるので、書店がリスクを背負うこととなり、
売れない本は仕入れないわけで、それでは出版社側も困るので「ハリー・ポッター」シリーズのように
発売すれば最初っから大ヒット間違いなし、という本が買切になるわけです。
では、なんで出版社は買切にするかというと、
販売委託でベストセラーになった本を出荷した場合、
ブームに乗って増刷を重ねたのは良いものの、委託期間が過ぎると書店から返本の山となってしまい、
かえって経営が苦しくなってしまう、いわゆるベストセラー倒産なんてことが起きてしまいかねないからです。
それを避けるため、予め売れるとわかっている本は書店さん買い取ってね、という話なのですね。
と言うと書店に迷惑な話に感じられるかもしれませんが、実は書店にもメリットがあります。
通常の委託販売のパターン配本では、出版社は返本を避けるために過剰な刷りは避け、
取次はお得意様の大きな書店を中心に貴重なベストセラーを卸すために、
街の小さな本屋さんには、売れる本はなかなか配本されません。
配本してもらえるとしても、ほんの数冊だったり、他の本とバーターだったり・・・
今回のように買切で卸すということは、おそらく街の本屋さんでも発注した数が配本されるでしょうから、
買いに来てくれたお客様を逃す心配もなくなるかもしれないというわけです。
というわけで買切制は、こうしたタレント本が発売されるとき、
皆が幸せになることができる素晴らしい仕組みだったのです!
と、水嶋ヒロの本が買切になることの評判があまりよろしくなかったようなので援護してみました。
が、予想に反して売れ行きが芳しくなかった場合、買切の本はどこに行くのでしょうか・・・
本当の問題点は、こうした本の流通システム、つまり日本の再販売価格維持制度にあり、
それが本題のつもりでいたのですが、書店の仕組みで長くなってしまったので回を分けたいと思います。
「書店の仕組み」奥付
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