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2004年5月 3日
エリザベート
東宝ミュージカル「エリザベート」を観劇してきました。
演出・訳詞 :小池修一郎
エリザベート:一路真輝
トート :山口祐一郎
ルキーニ :高嶋政宏
フランツ :石川禅
あらすじ:
黄泉の帝王・トートに愛されたエリザベートは、
オーストリアの皇帝・フランツと結婚するが、お互い愛しあっていても
心を通い合わせることができず・・・
●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●
現在帝国劇場で上演中のエリザベート。
あたしはストーリーも知らない中での初観劇。
ウイーン生まれの、幻想的な物語ということで期待していたのだけれど
ちょっと残念でした・・・
と言うのも、
エロスとタナトスがテーマの物語だと思うのだが
それにしては、芝居・演出共に下世話な感じがしてしまった。
例えば、エリザベートを演じる一路真輝。
若かかりし頃から年を経て行く様など、
現実的な部分は素晴らしく演じられていると思うが
肝心の、夫・皇帝フランツと、黄泉の帝王・トートとの狭間で揺れる様は、
単なる我が儘女にしかなり得ていないように見えてしまう。
演出的に言えば、けばけばしいスクリーンを使って
エリザベートが木から落下するシーンを再現していたが
こんなものはまったく不必要な上、舞台の雰囲気もぶち壊し。
なんせ、客席からも失笑が漏れるほど・・・
まぁ公演も中盤からは、さすがにこのシーンは改善されたので
ご覧になった方は、ある意味ラッキーということで。
他にも、嫁姑問題の部分がやたらインパクトが強かったりと、
細かく挙げていくとキリがないくらい、
下世話な部分が強調されてしまっている感じがした。
ハリソン・フォードの映画か、昼ドラでも見ているかのような・・・
大衆演劇ならばそれでいいのかもしれないが、
この作品に関しては、
現実に起こる出来事は、精神や感情を揺るがす誘因と割り切り
エリザベートの精神世界ーエロスとタナトスを、
幻想的に描ききって欲しかった。
そんな中、孤軍奮闘していた感じなのが山口祐一郎。
歌が素晴らしいのは勿論だし、
エリザベートへの愛が、自らの悦びとなるのか、苦しみとなるのか、
その葛藤を絶妙に表現しているように感じた。
役者として、表面に現すことやダンス・動きが得手ではない故に
俳優として評価が低かったように思うが、
先日、この作品で菊田一夫演劇賞大賞を受賞したのも
この辺りが評価されたのでは、と思う。
しかし、この公演のような東宝のウイーン・ミュージカルが、
国内のプロデュースミュージカル公演としては最高峰だと思うと
ストレートプレーの演劇を観劇した時には感じられない
全体的なレベルの低調さを感じてしまう。
ここ数年に観たミュージカルの中で、
あたしは「モーツァルト!」が一番良かったように思った。
同作では、中川晃教のパワーやパッションが
観客に感動を与えただけでなく、
共演者のテンションも高める効果があったのかもしれないが
キャスティングの面で考えてみても、
主役を中川晃教や松たか子などの若手が務め、
脇を山口祐一郎、市村正親、久世星佳ら実力派が固める、という形が
奏功した気がする。
現在の国内の状況を考えると、
このような体制の方が魅せる舞台ができるのでは、とあたしは思う。
まあ、とは言っても
実際は「モーツァルト!」よりも「エリザベート」の方が人気があるわけで
あたしの感覚がズレているか、
少なくとも興行に結びつくものではないのかもしれませんけれど・・・
ーメルマガ「シアターレビュー」vol.26よりー
「エリザベート」奥付
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