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2013年12月31日
■新聞の2013年演劇回顧
2013年演劇界を振り返る、新聞各紙の記事をまとめました。
読売新聞
演劇では「今年は、若い世代の新しい波が、はっきり形になって表れた1年だった。」と始まり、
藤田貴大作・演出のマームとジプシー「cocoon」「モモノパノラマ」、小川絵梨子演出「帰郷」「OPUS/作品」、森新太郎演出「汚れた手」「エドワード二世」、
劇団チョコレートケーキ「起て、飢えたる者よ」、中津留章仁作・演出のトラッシュマスターズ「来訪者」、
谷賢一訳・演出「最後の精神分析―フロイトVSルイス―」、矢内原美邦作・演出「静かな一日」、
中野敦之演出の劇団唐ゼミ☆「唐版 滝の白糸」、三浦大輔構成・演出「ストリッパー物語」を挙げています。
続いて「ベテランにも充実した仕事があった」とし、三谷幸喜演出「ロスト・イン・ヨンカーズ」、NODA・MAP「MIWA」、
蜷川幸雄のさいたまゴールド・シアター「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」とネクスト・シアター「ヴォルフガング・ボルヒェルトの作品からの九章」、
北村想作、寺十吾演出「グッドバイ」、長塚圭史演出の葛河思潮社「冒した者」、前川知大によるカタルシツ「地下室の手記」、
坂手洋二作・演出の燐光群「カウラの班長会議」、鈴木聡作・演出のラッパ屋「ダチョウ課長の幸福とサバイバル」が挙げられています。
ミュージカルでは、「100万回生きたねこ」、新演出の「レ・ミゼラブル」、劇団四季「リトルマーメイド」、
「SEMPO~日本のシンドラー杉原千畝物語~」、韓国ミュージカルのアミューズ・ミュージカルシアター開場を記載。
伝統芸では、歌舞伎で歌舞伎座再開場、能楽で世阿弥生誕650年を特筆。
しかし歌舞伎では、市川團十郎の訃報や、坂東三津五郎・片岡仁左衛門・中村福助など休演者続出を懸案としています。
産経新聞
演劇は「頼もしい若手演出家 充実の舞台」の見出し。
小川絵梨子「OPUS/作品」、森新太郎「エドワード二世」、上村聡史(2014年2月上演)という30代の演出家3人による新国立劇場の企画「Try・Angle―三人の演出家の視点―」を好企画とし、
小川・森に加え宝塚歌劇団「南太平洋」潤色・演出の原田諒を挙げています。
新作では、前川知大「地下室の手記」、蓬莱竜太「木の上の軍隊」、マキノノゾミ「横濱短篇ホテル」、鄭義信「さらば八月の大地」、北村想「グッドバイ」。
ミュージカルでは「ハロー・ドーリー!」、劇団四季「リトルマーメイド」、新演出「レ・ミゼラブル」、アミューズ・ミュージカルシアター開場が挙げられています。
伝統芸能は「歌舞伎座開場 来場100万人」の見出しで、歌舞伎座再開場、能楽で世阿弥生誕650年を記載。
演目では、歌舞伎で歌舞伎座柿葺落興行、新作「陰陽師」。能楽ではスーパー能「世阿弥」が挙げられています。
毎日新聞
木村光則の署名記事。見出しは「歌舞伎座が好発進」で、商業演劇最大の話題は歌舞伎座開場と書き出し。
幹部俳優があたり役を演じたとし、坂田藤十郎の「伽羅先代萩」の政岡、尾上菊五郎の「白浪五人男」の弁天小僧、中村吉右衛門の「熊谷陣屋」の熊谷、
片岡仁左衛門の「盛綱陣屋」の盛綱、松本幸四郎の「勧進帳」の弁慶、坂東玉三郎の「将門」の滝夜叉姫を挙げています。
続いて團十郎の悲報。坂東三津五郎、片岡仁左衛門、中村福助の不調を記し、演目選定に影響が出ることは必定で、不安材料としています。
ミュージカルでは「レ・ミゼラブル」新演出版。また125周年を迎えた新派「新釈 金色夜叉」「三婆」が挙げられています。
演劇では、福田善之「長い墓標の列」、三好十郎「冒した者」、ジョージ・バーナード・ショー「ジャンヌ」、サルトル「汚れた手」といった昔の作品、
蜷川幸雄「ヘンリー四世」「盲導犬」「唐版 滝の白糸」、三谷幸喜「ドレッサー」「ロスト・イン・ヨンカーズ」「おのれナポレオン」、野田秀樹「MIWA」、前川知大「地下室の手記」、小川絵梨子は「OPUS/作品」などを挙げています。
朝日新聞
西本ゆかの署名記事で、見出しは「生身の人間 真実問う」。
朝日らしいイデオロギー溢れる内容と共に挙げられている作品は、
マームとジプシー「cocoon」、坂手洋二作・演出の燐光群「カウラの班長会議」、
宮田慶子演出「長い墓標の列」、高瀬久男演出の文学座「ガリレイの生涯」、長塚圭史演出「冒した者」、
蜷川幸雄演出「ヴェニスの商人」、三谷幸喜作・演出「おのれナポレオン」、
宮沢りえ出演「MIWA」「盲導犬」、寺山修司作・松本雄吉演出「レミング」
森新太郎演出「汚れた手」「エドワード二世」、小川絵梨子演出「OPUS/作品」、蓬莱竜太「死ンデ、イル。」。
古典芸能では、歌舞伎で明暗の交錯が際立ったとし、歌舞伎座再開場で賑わった一方、
市川團十郎の急逝や坂東三津五郎・片岡仁左衛門・中村福助などの休演を記載。看板俳優の層の拡充は急務としています。
その他、前進座劇場の閉館、杉本文楽の欧州公演、世阿弥生誕650年などに触れています。
日本経済新聞
内田洋一の署名記事。「危機に触発された創作に深い余韻」という見出しで、まず東日本大震災の不条理と向き合う創作を挙げたいとし、
高木達作・演出「東の風が吹くとき」、長谷川孝治作・演出「祝/言」、蓬莱竜太作・演出「死ンデ、イル。」、文学座「ガリレイの生涯」、
長塚圭史演出の葛河思潮社「冒した者」、宮田慶子演出「つく、きえる」を挙げています。
また、領土問題が浮上して若い演劇人が危機感を募らせたとし、マームとジプシー「cocoon」、岡田利規作・演出「地面と床」、
てがみ座「地を渡る舟―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たちー」、栗山民也演出「木の上の軍隊」、民芸「夏・南方のローマンス」、宮田慶子演出「長い墓標の列」を記載。
続いて日中韓の演劇交流が重要さを増しているとし、日・中・韓国際共同制作の「祝/言」「アジア温泉」、日・中・韓の共同演劇祭「BeSeTo演劇祭」を挙げています。
ここでようやく演劇を出しにした政治的な主張が終わり、NODA・MAP「MIWA」、マキノノゾミ「非常の人 何ぞ非常に」「横濱短篇ホテル」、
三谷幸喜「おのれナポレオン」「ホロヴィッツとの対話」、岩松了「不道徳教室」、鄭義信「大空の虹を見ると私の心は躍る」、
蜷川幸雄「ヘンリー四世」「ヴェニスの商人」、ゴールドシアター「鴉よ、おれたちは弾丸をこめる」などを挙げています。
公共劇場は集客を意識せざるを得なくなり、似たり寄ったりの企画が目につく、芸術監督の発進力にかげりの見える劇場もあると批判。
世田谷パブリックシアター再演「春琴」が公共劇場の方向性を示していたとしています。
そして、むしろプロデュース力はプロダクションや劇団にあったとし、ホリプロ「100万回生きたねこ」、シス・カンパニー「グッドバイ」を挙げ、文学座が年間を通じて存在感を示したと評価しています。
ミュージカルで挙げられているのは、「モンテ・クリスト伯」、「ハロードーリー!」。音楽座「ラブ・レター」、劇団四季「リトルマーメイド」、宝塚歌劇団星組「ロミオとジュリエット」、雪組・月組「ベルサイユのばら」。
古典劇では、歌舞伎座新開場で歴史的な節目になったとし、藤十郎、菊五郎、仁左衛門、吉右衛門ら幹部たちの壮観な名舞台を息子世代は受け継いでいかなければならない、としています。
團十郎の死に加え、三津五郎、仁左衛門、福助の体調不良を挙げ、過密な興業日程に気をもむファンも少なくないのではないかと記載。
勘三郎亡きあと、画期的な新作を生み出す活力をどう保つか、課題はつきないと結んでいます。
文楽では咲大夫「心中天網島」。その他、スーパー能「世阿弥」、友枝昭世「景清」、浅見真州「井筒」、野村萬を挙げています。
物故者
歌舞伎俳優の市川團十郎、俳優座の大塚道子、俳優すまけい、狂言の茂山千作、
歌舞伎研究の河竹登志夫、プロデューサー木山潔、翻訳の岩淵達治、作詞家の岩谷時子などが、今年亡くなった方々として各紙で取り上げられています。