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2011年12月31日
■新聞の2011年演劇回顧
2011年演劇界を振り返る、新聞各紙の記事です。
読売新聞
塩崎淳一郎の署名記事で、12月12日に「回顧2011 伝統芸」を掲載。
冒頭は東日本大震災についての内容で、郷土芸能が盛んな東北の被災地への影響をはじめ、
国立6劇場でも3月一杯公演中止だったことなどを記しています。
歌舞伎では、市川海老蔵が不祥事で謹慎、中村勘三郎が体調不良で休演したこと、
中村吉右衛門が人間国宝に認定、坂東玉三郎は鼓童芸術監督就任などに触れ、
2012年は勘太郎が勘九郎、亀治郎が猿之助、猿之助が猿翁を襲名すること、香川照之が歌舞伎に入ることなどを記述。
能狂言などでは、高齢化や謡曲人口の減少などにより、一部を除いて集客が芳しくなかったこと、
舞踊や邦楽をも含め、和の文化の衰退に歯止めがかからなかったとしています。
最後に物故者として、立川談志、中村富十郎、中村芝翫、茂山忠三郎を挙げています。
12月14日には「回顧2011 演劇」を、『逆境の舞台 充実の作品群』という大見出し、山内則史の署名記事で掲載。
まず「復興への思い」という副題で、こちらも東日本大震災の影響などを冒頭から記載し、
NODA・MAP「南へ」での野田秀樹の「劇場の灯が消えるときは『ココロ』の灯が消えるとき」という挨拶を引用。
震災に触発された作品として遊園地再生事業団「トータル・リビング 1986-2011」、唐組「西陽荘」、野外劇「じめん」、トラッシュマスターズ「背水の孤島」を挙げ、
被災地を巡回した劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」にも触れています。
続いて「50代作家フル回転」という副題で、大感謝祭と銘打った三谷幸喜、岩松了、鈴木聡、坂手洋二「たった一人の戦争」「帰還」などを記載。
続いて副題「数々の節目」では、劇団四季「キャッツ」8,000回上演、「レ・ミゼラブル」オリジナル演出版閉幕を取り上げた他、
蜷川幸雄「血の婚礼」「あゝ、荒野」、平田オリザ「ソウル市民」などにも触れています。
また80年代小劇場ブームの中心だった第三舞台復活公演が解散公演となったことから、一時代の終わりを感じさせた記述。
若手では、ままごと「わが星」、サンプル「ゲヘナにて」、柿食う客「悩殺ハムレット」、KAKUTA「ひとよ」、
物故者として、斉藤憐、細川俊之、小幡欣治、宇野誠一郎(作曲家)、磯沼陽子(舞台美術家)を挙げています。
日本経済新聞
編集委員・内田洋一の署名付きで「演劇回顧2011」を、『言葉の力を生き返らせた「祈り」』というタイトルで掲載。
「演劇にとって東日本大震災はどんな意味をもつだろうか。」と冒頭で記し、
読売と同じような内容でNODA・MAP公演と野田秀樹の挨拶を冒頭で取り上げ、
井上ひさし「たいこどんどん」、「ゴドーを待ちながら」を挙げたのに続き、被災地での取り組みを紹介。
仙台で演劇人が結成したアルクト(Art Revival Connection TOHOKU)、
OCT/PASS主宰の石川裕人がトラックのコンテナを舞台にした宮沢賢治の芝居で三陸を巡演したこと、
劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」、高校演劇(いわき総合高校)などに触れています。
なお震災に触発された創作から傑作は生まれていないものの、懸命の模索は胸を打ったと述懐。
震災の劇化で優れた作品としてフェスティバル/トーキョー11で上演された野外劇「わたくしという現象」「じめん」を挙げています。
創作劇では、三谷幸喜4本の新作、、平田オリザ「ソウル市民 1939 恋愛二重奏」「サンパウロ市民」、
青年座「をんな善哉」、岡田利規「家電のように解りあえない」、ままごと「わが星」などが挙げられる中、
一番力強い制作力を示したのは北村明子プロデューサー率いるシス・カンパニーとし、
「大人は、かく戦えり」「トップ・ガールズ」「ベッジ・パードン」「泣き虫なまいき石川啄木」「その妹」と挙げています。
新国立劇場は危機の年と格闘する姿勢が見えず物足りなさが残ったとした一方、神奈川芸術劇場は宮本亜門芸術監督の意欲が前面に出たと評価しています。
ミュージカルでは東宝の翻訳物初演「三銃士」「ニューヨークに行きたい!!」「GOLD~カミーユとロダン~」は強固な成果に至らないとし、
音楽劇ながら、大竹しのぶが歌唱力で存在感を示した「ピアフ」を評価。
古典芸能では、歌舞伎座建て替え中ながら歌舞伎興行は増加したこと触れ、染五郎、亀治郎、菊之助、勘太郎など花形世代が腕をあげたとしています。
また吉右衛門の播磨屋一門が地力をあげ、菊五郎と並び立ち、かつての菊吉時代の再来が現実のものとなりつつあると記述。
最後に活躍した俳優として、平幹二朗、小日向文世、段田安則、橋爪功、大泉洋、浅野和之、辻萬長、国村隼。
女優では奈良岡朋子、大竹しのぶ、蒼井優、深津絵里、麻実れい、寺島しのぶ、秋山菜津子、高畑淳子、松たか子、香寿たつきを挙げています。
毎日新聞
木村光則の署名付きで『演劇:この1年「自粛」「自己規制」に立ち向かう演劇人も』を14日夕刊に掲載。
やはり東日本大震災への対応から記述が始まっており、震災後公演を中止にしたか否かの対応が分かれたことを紹介。
そしてここでも野田秀樹の挨拶が引用されています。
被災地公演としては劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」、精力的な活動として三谷幸喜を挙げた他、
何の雑感もなく新国立劇場【美×劇】-滅びゆくものに託した美意識-」、新理事長に福地茂雄・前NHK会長が就任したことを記載しています。
また、若手・中堅の躍進が目立ったとし、中津留章仁「背水の孤島」、前川知大「散歩する侵略者」「奇ッ怪 其ノ弐」、鈴木勝秀「クラウド」、谷賢一「モリー・スウィーニー」を特筆。
その他、蜷川幸雄、文化功労者に選出された大滝秀治、第三舞台や★☆北区つかこうへい劇団の解散を記し、
亡くなった方として斎藤憐、細川俊之、新村礼子、小幡欣治、岡島茂夫、礒沼陽子を挙げています。
朝日新聞
『震災・原発すぐ反応』というタイトルで、回顧2011・演劇を15日夕刊に掲載。
演劇は小山内伸の署名記事で「自然災害への葛藤や死者への鎮魂 」の題。
やはり東日本大震災の影響から記されており、制作が身軽なメディア故に震災と原発事故に触発された作品が多数作られたことを記載。
最も早く反応した作品として中津留章仁ラバーズ「黄色い叫び」、
電力行政を笑いのめしたケラリーノ・サンドロヴィッチ「奥様お尻をどうぞ」、
ラッパ屋「ハズバンズ&ワイブズ」、燐光群「たった一人の戦争」などを挙げています。
続いて、劇作家の活躍が目立ったとしながら、筆頭は井上ひさしと判定。
その他、三谷幸喜は生誕50周年、坂手洋二、岩松了を記載。
俳優では「ミシマダブル」「ヴェニスの商人」の平幹二朗、「大人は、かく戦えり」「身毒丸」「ピアフ」の大竹しのぶ、
ミュージカルでは宝塚歌劇団と男女共演版で上演された「ロミオ&ジュリエット」、「スリル・ミー」を挙げています。
古典芸能は、西本ゆかの署名記事で「公演で復興支援」の題。
やはり震災時や震災後の対応や、中村勘三郎の復帰、中村吉右衛門の人間国宝認定、市川海老蔵の復帰を記載。
また亀治郎の猿之助襲名、香川照之が2012年に梨園入りすることも挙げています。
「私の3点」は、大笹吉雄が平成中村座十一月大歌舞伎「沼津」、新国立劇場「ゴドーを待ちながら」、トラッシュマスターズ「背水の孤島」。
扇田昭彦がパルコ「国民の映画」、マームとジプシー「塩ふる世界。」、さいたまゴールド・シアター「ルート99」。
藤田洋が東宝「ピアフ」、国立劇場文楽九月公演「ひらかな盛衰記」、文化座「獅子」。
産経新聞
飯塚友子の署名記事で「回顧 平成23年 演劇」を掲載。タイトルは『被災地公演、子供に元気 劇団四季』。
観客の意識が芸能に向きにくく空席が目立つ客席の中「日常を守るべき」と公演を続けた劇場や劇団もあり、
演劇の力が試された1年だったと、やはり東日本大震災の影響から記事はスタート。
劇団四季が「ユタと不思議な仲間たち」を被災地無料招待したこと、後日TV放送されたことなどを記載。
劇作家では三谷幸喜の活動を挙げた他、80年代小劇場ブームを牽引した第三舞台が復活・解散となったこと、
没後1年の井上ひさし作品の上演が相次いだことなどが挙げられています。
劇場として、神奈川芸術劇場が開館して宮本亜門が芸術監督に就任したこと、
開場100年を迎えた帝劇が年間を通じて記念公演を行ったことを挙げ、
最後に「上海バンスキング」の劇作家・斎藤憐が死去した、と結んでいます。
古典芸能は『光った若手の奮闘』というタイトルで掲載。
歌舞伎座は建て替え、中村富十郎、中村芝翫を失い、中村勘三郎が休演、市川海老蔵も謹慎するなど厳しい状況の中、
市川染五郎、亀治郎、尾上松緑、菊之助、中村勘太郎ら若手の奮闘が目立ったとしています。
また中村吉右衛門の人間国宝認定、中村又五郎・歌昇の親子同時襲名、又五郎の怪我をおしての舞台を挙げ、
来年は亀治郎の四代目猿之助襲名に加え、香川照之と長男の歌舞伎界入りがあると記しています。