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2010年12月31日
■新聞の2010年演劇回顧
2010年演劇界を振り返る、新聞記事です。
読売新聞
12月15日に「回顧2010 演劇」を掲載。
大見出しは「井上、つか失い若手台頭」で、2人の巨星が相次いで亡くなり衝撃を与えたこと、
不透明な経済状況下、集客に苦しむ公演が多く、補助金の環境も厳しい「逆風」の1年となった。
一方で演劇祭や国境を越える交流から芸術面の成果が上がるなど演劇運動の胎動も感じられると冒頭で記しています。
「演劇・劇作」では、野田秀樹「ザ・キャラクター」、鈴木裕美「富士見町アパートメント」、川村毅「新宿八犬伝」シリーズが作品名まで挙げられ、
ケラリーノ・サンドロヴィッチ、唐十郎、鈴木忠志などの名前も。
若手として、中津留章仁、前田司郎、長塚圭史、倉持裕、前川知大、三浦大輔、岡田利規、本谷有希子、タニノクロウ、蓬莱竜太。
また、劇団新派が健在、藤山直美が寛美没後20年公演で人気を集めるとした一方、
文学座、劇団民藝などの老舗劇団は定期的に公演を行ったものの、演劇鑑賞団体の衰退で岐路に立つと記述。
ミュージカルでは、東宝が欧州の人気作で動員面では軍を抜いたとしつつ、
謝珠栄のTSミュージカルファンデーションが、輸入一辺倒の風潮と一線を画すると評価。
劇団四季は四季劇場・夏と札幌の新劇場建設が進んだこと、
宝塚は水夏希などの退団と新トップ就任が、それぞれ触れられたのみ。
宮本亜門はロンドンで日本人初のミュージカル演出に挑んだが短期間で閉幕。苦境にめげず神奈川芸術劇場の芸術監督に、と記載。
「俳優の活躍」の小見出しでは、
文学座「女の一生」の荘田由紀主役起用の話題が最初に触れられ、
多部未華子、黒木メイサ、大竹しのぶ、麻実れい、大滝秀治、江守徹、草笛光子、大塚道子、岩崎加根子、川口敦子、市村正親の名前も。
「演劇界」では、蜷川幸雄の文化勲章受章を最も明るい話題とし、
森光子の話題、劇団☆新感線結成30年、劇団M.O.P.解散、ふるさときゃらばん自己破産、
フェスティバル/トーキョー、内閣官房参与の平田オリザ(青年団主宰)らの「劇場法」成立を目指す動きなどを記し、
新国立劇場の監督交代で混乱した劇場の立て直しが急務という結び。
「物故者」では、井上ひさし、つかこうへい、劇団民芸の北林谷栄、長岡輝子、
池内淳子、青年座の東恵美子、演劇集団円の南美江、劇団黒テントの山元清多を挙げています。
また、12月13日には「回顧2010 伝統芸」を掲載。
「海老蔵事件 歌舞伎に激震」の見出しで、市川海老蔵の結婚、盛大な披露宴から一転、
11月末に発覚したトラブルで2011年1月の南座興行が中止、2月名古屋公演も休演。
歌舞伎のイメージ低下が懸念されるとしています。
次いで、歌舞伎座の閉場、松本幸四郎が弁慶役で「勧進帳」47都道府県公演達成、
国立劇場が1967年に始めた歌舞伎鑑賞教室の入場者数が6月に500万人突破などを挙げ、
役者では中村吉右衛門、中村勘三郎、坂東玉三郎、中村時蔵、中村芝雀の名前を挙げています。
能狂言は「弟子が減少し将来に不安を抱える」という書き始めで、
大倉源次郎の囃子のネット配信、野村萬、万作、友枝昭世、梅若六郎を記載。
清元・文楽では、竹本綱大夫・鶴沢清二郎が来春に親子同時襲名を行うことを挙げています。
朝日新聞
12月20日「回顧2010 演劇」を山口宏子の署名入り記事で掲載。
「井上ひさしら、巨星が去る」の見出しで「振り返ると、まず浮かぶ言葉は--喪失」とし、
井上ひさし、つかこうへい、青年座の東恵美子、民芸の北林谷栄、円の南美江、文学座の長岡輝子と戌井市郎、
舞踏の大野一雄、狂言の茂山千之丞と、亡くなった方について行数を割いて記しています。
記事ではその流れで文章を記し「演劇は、祈りか」とした上で、「ザ・キャラクター」の野田秀樹と出演した古田新太を記載。
「中堅、若手は、特に翻訳劇での躍進が際立った」とし、
長塚圭史「ハーパー・リーガン」「タンゴ」、tpt「おそるべき親たち」「この雨 ふりやむとき」、
小川絵梨子「今は亡きヘンリー・モス」を挙げています。
ベテランでは栗山民也を挙げ、他には維新派、蜷川幸雄、歌舞伎座建て替えについて書き立てています。
なお、私の3点で扇田昭彦が挙げたのは、
「ザ・キャラクター」 「今は亡きヘンリー・モス」「美しきものの伝説」
毎日新聞
「演劇 この1年」を濱田元子の署名記事で掲載。
「蜷川らベテランが活躍 残念な井上ひさしと、つかこうへいの死」という見出しで、
2人の相次ぐ死から始まり、ベテランの活躍と台頭する若手への期待感が交錯する年だったとしています。
挙げられているのは、追悼も込められた多くの井上作品、蜷川幸雄の文化勲章、
野田秀樹「ザ・キャラクター」「表に出ろいっ!」、
ケラリーノ・サンドロヴィッチ「2人の夫とわたしの事情」「黴菌(ばいきん)」、
長塚圭史の翻訳物「ハーパー・リーガン」「タンゴ」、
あいちトリエンナーレで上演された平田オリザのロボット演劇「森の奥」。
若手として前川知大、新国立劇場の宮田慶子が鮮烈なスタートと評価。
新劇では、民芸「巨匠」「どろんどろん」の大滝秀治の演技を印象深いとし、
文学座アトリエ創設60周年、俳優座の「樫の木坂四姉妹」をただ記しています。
その他、劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」子役たちの熱演を評価。
精華小劇場閉館、ワッハホール貸館業務終了などを挙げ、東京一極集中を懸念。
芸団協が国家予算に占める文化予算の割合を0.11%から0.5%に増やすよう、
約60万人分の署名をもって国会に請願したとしています。
「大劇場 この1年」を小玉祥子の署名記事で掲載。
こちらは「歌舞伎座建て替え 16カ月のさよなら公演、豪華顔合わせで大入り」の見出しで、
歌舞伎座建て替え、さよなら公演について行数を割いて記載。
他には、国立劇場の演目を列挙、猿之助四十八撰、
前進座の嵐広也が「切られお富」で七代目嵐芳三郎を襲名したことなどに触れています。
東宝系の劇場はミュージカル主体だったとし、「ミュージカルはロングラン達成」の小見出し。
「エリザベート」「モーツァルト!」がロングラン、
評価する作品に「ジョン・ケアード版 キャンディード」「RENT」、
ストレートプレイ「THE 39 STEPS」、
宝塚「カサブランカ」「スカーレットピンパーネル」を挙げています。
最後は新派を挙げ、「麦秋」「香華」「滝の白糸」が収穫とし、明治座では「女は遊べ物語」があげられる、と結んでいます。
産経新聞
ミュージカル、特に宝塚歌劇に注力している産経は、平松澄子の署名記事で「宝塚人気の功労者逝く」の見出し。
小林公平が亡くなったことを冒頭に記しています。
公演では、名作の再演「虞美人」「誰がために鐘は鳴る」、
映画の舞台化「麗しのサブリナ」「愛と青春の旅だち」を挙げ、オリジナル新作が弱いと評。
OSK日本歌劇団は、8月に本社と研修所を一体化して大阪・西天満に移転。公演も多彩に活動と評価しています。
劇団四季は、「ウィキッド」1,000回、新作「サウンド・オブ・ミュージック」、
9館目となる専用劇場・四季劇場[夏]開場、業界初の「チケット出品システム」などを記載。
その他、「ワンダフルタウン」「CHICAGO」を挙げています。
「文化部記者のベスト3 宝塚・ミュージカル編」は、萩原万貴枝の署名記事。
1.宙組公演「カサブランカ」、2.星組公演「愛と青春の旅だち」、3.ロックミュージカル「GODSPELL ゴッドスペル」。
日本経済新聞
12月6日に「回顧2010 演劇」を内田洋一編集委員で掲載。
井上ひさし、つかこうへい、長岡輝子、北林谷栄などの追悼を記載。
作品では、栗山民也演出の東京裁判3部作、NODA・MAP「ザ・キャラクター」、現代能楽集「愛の鼓動」などを特筆。
創作劇では、岡田利規、中津留章仁、蓬莱竜太、前川知大、前田司郎、松井周ら1970年代生まれの劇作家が活躍とし、
演出家では、栗山民也「イリアス」、蜷川幸雄「じゃじゃ馬馴らし」を挙げています。
俳優は、女優の奮闘が目についたとして、佐藤オリエ、麻実れい、中嶋朋子共演のtpt「おそるべき親たち」を圧巻と評価。
他に、岩崎加根子、銀粉蝶、大竹しのぶ、宮沢りえ、新妻聖子らの演技が光ったとし、
特に東宝のジョン・ケアード版「キャンディード」で新妻聖子と市村正親の名前を挙げ、ミュージカルの目下の水準を示したとしています。
男優では年間を通して木場勝己が充実と評価。
芸術監督が創作をリードする時代とし、新国立劇場の宮田慶子新監督は、無難な滑り出しだが、真の成果はこれからと記述。
歌舞伎では、歌舞伎座さよなら公演、勘三郎「俊寛」、仁左衛門「道明寺」、吉右衛門、玉三郎の昆劇「牡丹亭」、
文楽は、三島由紀夫の歌舞伎「鰯売」を人形浄瑠璃の新作として上演したことなどを挙げています。