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2009年4月22日
■「東京オリンピック誘致」が「演劇界」に与えた好機とは?
日経トレンディネットに、演劇ジャーナリスト岩城京子による
『「東京オリンピック誘致」が「演劇界」に与えた好機とは?』というタイトルのおもしろい記事が載っています。
3月末まで行われていたフェスティバル/トーキョー09には
演劇界においてはごく稀である巨額予算がおり、
比較的安い価格で良質の演目を観ることができた、ということに絡め、
日本でも演劇文化が広まり、そしてそれを理解する観客が増えることを願う・・・
といったあたりが主旨だと思われる記事です。
●「東京オリンピック誘致」が「演劇界」に与えた好機とは? - 日経トレンディネット
ニュースというよりコラムのような記事ですので特に補足することもないのですが、
チケットの値段についてありましたので、記事では除外している商業演劇のチケット価格について少々。
たとえばかの有名なポンピドゥー・センターで一流舞台に臨もうと思っても
チケット価格は15ユーロ前後(1ユーロ=130円/約1950円)と破格だし、
パリ市立劇場でウィリアム・フォーサイスやアラン・プラテルの公演に足を運んでも
席代は最高値で26ユーロ(約3400円)と非常に良心的。
同演目を日本で観ようとすると、いきなりチケット代が1万円に跳ね上がることを考えると、
確かに、フランスのほうが気楽に芸術文化に触れることができるといえる。
現在、ブロードウェイ・ウエストエンド・日本で上演されている
ミュージカル「ライオンキング」でチケットの値段を比較してみると、
ブロードウェイが60〜120ドル程(6,000〜12,000円程)、
ウエストエンドが20〜60ポンド(2,500〜8,500円程)、
日本が2,500〜10,000円程。
最近、ポンドに対してはかなり円高が進んでいるため
ウエストエンドは安く感じますが、実際は大差がない印象です。
しかし、日本版のライオンキングは劇団四季による上演。
四季はチケットの値下げを行い、子供・学生価格の設定もあるため
2,500円という安いチケットが存在しますが、
他の一般的な商業演劇では子供料金の設定があることもほとんどないため、
5,000円くらいからという価格設定が多いと思います。
そして逆に、ブロードウェイやウエストエンドには、
当日まで売れ残ったチケットを25〜50%offで販売する、
TKTSというチケット販売所が存在します。
また、公演当日の劇場窓口でも
ラッシュチケット(rush)という観づらい席を安価に販売するチケットや、
立ち見席(standing)を販売している公演がほとんど。
また、観光客向けに割引券を出している公演もありますし、
つまり席にこだわらなければ気軽に安く観劇できる方法があるわけです。
どんなに芸術的、文化的な演劇であっても
基本的にはビジネスとして採算が取れる方法を模索すべきだと思います。
税金を投入してでも残すべき伝統芸能もあるとは思いますが、
それは一定の支持があってこその話。
演劇文化の底辺を拡大するためにも、
まずは多くの人に劇場へと足を運んでもらわなければなりませんし、
日本の場合、見切り席・学生割引などの導入が進んでくれることを期待したいところです。
収益を上げろ、チケット価格は下げろ、と言うと矛盾するようですが、
大事なのはそこのバランスではないでしょうか。
例えば日本の場合、前方席・後方席・2階席でチケットの価格を区分することが多いですが、
もっと区分を増やし、後方の上下(両端)は値下げ、
逆に映画館で指定席になるような良い席は値上げする、など均衡を取る術はあるはず。
また、空席のまま上演するくらいなら半額ででも席が埋まっていた方が良いでしょうから、
TKTSのような当日ディスカウント・チケットを販売するなど、
いろいろと方策はあるのではないかと思うのです。