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2009年4月27日

■Googleブック検索の日本への影響

書籍をウェブでデータベース化する「Googleブック検索」の概要と、日本の著作権所有者団体の対応など。

Googleブック検索(Google Book Search)とは、
米Googleが書籍本文をスキャンしてデジタル化し、内容を検索できるようにしたサービス。
絶版されたか市販されていない書籍については書籍の全文を閲覧できるようになっており、
2005年には米国出版社協会(Association of American Publishers)などが
集団提訴を起しましたが、収益の63%を著差者に支払うことなどが決められ、2008年10月に和解に至っています。

この和解により、Googleは今年1月5日以前に出版された書籍のうち、
米国で市販されていない書籍については商用利用が可能になりました。
つまり、米Googleはデジタル化した書籍をデータベース化し、
広告をつけて公開したり、販売したりして収益を上げるわけです。

これは米国で著作権を有する人が対象になりますから、
Googleブック検索を利用できるのも米国からのみとなるのですが、
ベルヌ条約の規定により、日本で出版された書籍についても米国内で同様の著作権が発生するため、
この和解内容は日本の著作権者においても有効である、というところが日本で問題になっています。

この和解案では、著作権者がGoogle側に何らの通知も行わなければ、
和解案記載の条件を原則として受け入れたものとみなされます。
和解からの除外、異議の申し立て期限は2009年5月5日。
つまり、Googleブック検索のことを知らずにいた日本の著者がいれば、
その著者の本は、いつしかGoogleブック検索に広告がついて掲載されたり、
販売されたりしていることになるかもしれないというわけです。


これに対し、4月15日には日本文藝家協会が抗議を含んだ声明を、
4月25日には日本ビジュアル著作権協会が集団和解離脱声明を発表しました。

日本の文芸家2,500名余が所属する日本文藝家協会は、
「日本の著作権者が何も知らないか、あるいは何も積極的な行為をとらないままでいれば、
日本の著作権法上、違法として許されない行為を承認したものとみなされるのである。」と主張、
「こうした著作権者の権利の一部を一方的に失わせるという重大な結果を招来する和解案の著作権者への通知は、
日本では一部の新聞・雑誌への各1回の広告掲載(それも実に発見し難い表示方法であった)のみであったことも、
信じられないほどの日本の著作権者に対する軽視であった。」と記しています。

一方で「私たちは書籍をデジタル化して検索可能な状態にすることに反対しているわけではない。
むしろ、紙の劣化の実情を考える時、この問題への対応は急務となるであろうと認識している。」ものの、
「今回の和解案は、私たち米国外の著作権者の協力できるような性質のものではないので、強く反対するものである。」と結論付け、
「当面の最低限の防衛策として、私たちの会員や著作権管理委託者に、米グーグル社から提示された和解案に応じたうえで、
個々のデータを削除する要求を選択するように勧めることとした。」
「日本グーグル社が日本で書籍のデジタル化を進めるにあたって
日本の著作権法遵守の姿勢を引き続き保つことを求める」としています。

日本ビジュアル著作権協会は、「和解案を検討し、日米双方の提携弁護士事務所と協議を行い、対応を検討」してきた結果、
「会員各位に対しては和解に同意しないよう勧告を送り、4月25日現在、
174名の著作権者が和解からの離脱を表明しております。」
「提携弁護士事務所からグーグル社に通知を送り、
和解の枠組みとは別に、グーグル社と交渉を進める予定です。」とのこと。
「今回の和解案は、米国で米国の作家と米国の出版社が、米国の企業との紛争のなかでまとめられたもので、
ここに日本の著作権者、出版関係社の意見はまったく入っていません。
そこで私たちは、間近にせまった5月5日という和解回答期限に拘束されず、
あらためて、今回のグーグルの行為を検証し、きちんとした交渉を行なっていきたいと考え、
和解からの離脱という結論に至りました。」と結んでいます。
離脱を表明した会員で公表された中には、倉本聰・妹尾河童・寺山修司(著作権継承者)といった演劇関係者も含まれています。

※2009/4/28追記
米連邦裁判所はGoogleブック検索をめぐる訴訟の和解案について、
作家の除外通知期間を5月5日から9月4日へと4カ月延期することを決定しました。

※2009/11/14追記
googleや全米作家協会などは、対象を米、英、カナダ、オーストラリアの
英語圏の出版物に限定することなどを盛り込んだ修正案を発表しました。
これにより、当面は日本への影響はなくなったものと思われます。

Google ブック検索
Google ブック検索に関する権利保持者への和解通知

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「Googleブック検索の日本への影響」奥付

  • Posted : 2009年4月27日 01:07
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