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2008年4月 2日
■映画「靖国」
映画「靖国」の上映を取りやめる映画館が相次ぎ、問題となっています。
靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」。
4月12日から、東京都内4館、大阪市内1館で公開されることが決まっていましたが、
トラブルを警戒し、3月18日に新宿バルト9が公開中止を発表。
残りの4館(銀座シネパトス・渋谷Q-AXcinema・シネマート六本木・シネマート心斎橋)
も追随し、相次いで公開中止が発表されました。
この映画は、いわゆる反日的なイデオロギーを含む作品のようで、
公開にあたって右翼系の思想を持っていると思われる団体などが抗議、
トラブルを恐れた映画館が公開を中止したということです。
この映画をめぐっては、文化庁管轄の独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、
製作に750万円助成したのを自民党の稲田朋美衆院議員が疑問視。
3月12日に国会議員向けの試写を行い、議員40人が参加しています。
芸術文化振興助成金の交付に際しては「政治的宣伝意図を含むものは除く」
と定められており、この映画に国が助成を行ったことに対し、
助成が適正であったかどうか問題提起をしたということです。
つまり、この映画「靖国」の問題は、圧力に負けて映画の公開が中止にならないようにということと、
また杜撰なチェックでいい加減な助成が行われていた(可能性がある)、ということだと思うのですが、
様々な企業や団体がいろいろとイデオロギーを含んだ発言をしていますね。
例えば、主要4紙もすべて社説で取り上げています。
●産経 「靖国」上映中止 論議あるからこそ見たい
●読売 「靖国」上映中止 「表現の自由」を守らねば
●毎日 「靖国」中止 断じて看過してはならない
●朝日 「靖国」上映中止―表現の自由が危うい
※追記:すべてリンク切れ
産経以外の各紙は、言論・表現の自由が侵されることを記して上映中止を憂いていますし、
産経も上映される機会が失われたことを嘆いています。
つまり、各紙とも何らかの圧力によって言論や表現の自由が奪われることを危惧しており、これは誰しもが思う当然のことですね。
しかし、その後の論調にはけっこう差があり、
毎日は国会議員による試写自体を、無形の圧力になると批判。
朝日は助成の是非を問うた稲田議員に対し、その行動が表現の自由を制限するものでないならば、
上映を呼びかけるなど行動を起こせと、よくわからない提言をしています。
普段、税金の使い途がどうだこうだと特に批判が激しい両紙が今回はその部分に触れず、
議員による圧力だといった論調で批判しているのも筋が通っていない感じですし、
そもそも助成の是非を疑問視した問題と、映画公開が中止されたことを
混同して議論すること自体、ちょっと無理がある感じがします。
産経・読売は、その辺りきちんと指摘していますが、
産経は、信憑性に乏しい記録映画のために税金が使われたのは問題だといった論調で、
映画の上映が中止になったことよりも、ややナショナリズムを煽るような方向性に感じられ、
結局、このニュースに関しても最も客観・中立的に報道しているのは読売のように思えます。
ともあれ、今後も全国の映画館で公開が予定されているようですので、
それらが無事に上映されることと、助成の許認可の方法やその是非について、きちんと解明されることを願いたいと思います。
●映画「靖国」
監督:李纓(リー・イン)
出演:刈谷直治/菅原龍憲/高金素梅
DVD:靖国 YASUKUNI [DVD]